国産み (Kuni-umi (a myth about the birth of the land of Japan))
国産み(くにうみ)とは、日本の国土創世譚を伝える神話である。
イザナギとイザナミが天の橋にたち矛で混沌をかき混ぜ島をつくる。
また、『古事記』などではそののち2神で島を産んだというものである。
この島産みは中国南部、沖縄諸島から東南アジアに広く分布する「大洪水」に似た点が多いといわれる。
なお、国生みの話の後には神生み(かみうみ)が続く。
以下、この記事では、日本神話において、大八島(おおやしま)がどのように形成されたかを記す。
あらすじ
古事記
古事記によれば、大八島は次のようにして生まれた。
伊邪那岐(イザナギ)・伊邪那美(イザナミ)という二柱の神は、別天津神(ことあまつがみ)たちに漂っていた大地を完成させることを命じられる。
別天津神たちは、天沼矛(あめのぬぼこ)を二神に与えた。
伊邪那岐・伊邪那美は、天浮橋(あめのうきはし)に立って、天沼矛で、渾沌とした大地をかき混ぜる。
この時、矛から滴り落ちたものが、積もって島となった。
この島を淤能碁呂島(おのごろじま)という。
二神は淤能碁呂島に降り立って会話をし、結婚する。
古事記からの引用。
伊邪那岐
「汝身者如何成也」
「汝(いまし)が身(み)はいかに成れる」
「あなたの体はどのようにできていますか」
伊邪那美
「妾身層層鑄成 然未成處有一處在」
「わが身はなりなりて成り合はざる処一処あり」
「私の体には、成長して、成長していないところ(女性器のことを示す)が1ヶ所あります」
伊邪那岐
「吾身亦層層鑄也 尚有凸餘處一」
「故以此吾身之餘處 刺塞汝身之未成處 為完美態而生國土」
「奈何」
「わが身はなりなりて成り余れる処一処あり。」
「故(かれ)このわが身の成り余れる処を以て、汝が身の成り合はざる処を刺し塞ぎて、国土(くに)を生み成さんと以為(おも)ふ。」
「生むこといかん。」
「私の体には、成長して、成長し過ぎたところ(陰茎のことを示す)が1ヶ所あります。」
「そこで、この私の成長し過ぎたところで、あなたの成長していないところを刺して塞いで、国土を生みたいと思います。」
「生むのはどうですか。」
こうして、二神は性行為を始める。
しかし、この性交の前に、女性である伊邪那美のほうが、先に男性の伊邪那岐を誘ったために、ちゃんとした子供が生まれなかった。
最初に産まれた子供は、水蛭子(ひるこ)であり、二神はこの子を葦舟に乗せて流してしまった。
次に産まれたのは淡島(あはしま)であった。
水蛭子と淡島は、伊邪那岐・伊邪那美の子供の内に数えない。
ちゃんとした子供が生まれないので、二神は、別天津神のもとに赴き、どうするべきかを聞いた。
すると、占いによって、女から誘うのがよくなかったとされた。
そのため、二神は淤能碁呂島に戻り、今度は男性の伊邪那岐から誘って再び性交をする。
島産み
ここからこの二神は、大八島を構成する島々を生み出していった。
産んだ島を順に記すと下のとおりになる。
淡道之穂之狭別島(あはぢのほのさわけのしま) 淡路島
伊予之二名島(いよのふたなのしま) 四国
胴体が1つで、顔が4つある。
顔のそれぞれの名は以下の通り。
愛比売(えひめ) 伊予国
飯依比古(いひよりひこ) 讃岐国
オオゲツヒメ(おほげつひめ) 阿波国(後に食物神としても登場する)
建依別(たけよりわけ) 土佐国
隠伎之三子島(おきのみつごのしま) 隠岐島
別名は、天之忍許呂別(あめのおしころわけ)
筑紫島(つくしのしま) 九州
胴体が1つで、顔が4つある。
顔のそれぞれの名は以下の通り。
白日別(しらひわけ) 筑紫国
豊日別(とよひわけ) 豊国
建日向日豊久士比泥別(たけひむかひとよじひねわけ) 肥国
建日別(たけひわけ) 熊曽国
伊伎島(いきのしま) 壱岐島
別名は、天比登都柱(あめひとつばしら)
津島(つしま) 対馬島
別名は、天之狭手依比売(あめのさでよりひめ)
佐度島(さどのしま) 佐渡島
大倭豊秋津島(おほやまととよあきつしま) 本州
別名は、天御虚空豊秋津根別(あまつみそらとよあきつねわけ)
以上の、八島が最初に生成されたことにより、日本のことを大八島国という。
二神は、続けて、6島を産む。
吉備児島(きびのこじま) 児島半島
別名は、建日方別(たけひかたわけ)
小豆島(あづきじま) 小豆島
別名は、大野手比売(おほのでひめ)
大島(おほしま) 周防大島
別名は、大多麻流別(おほたまるわけ)
女島(ひめじま) 姫島村
別名は、天一根(あめひとつね)
知訶島(ちかのしま) 五島列島
別名は、天之忍男(あめのおしを)
両児島(ふたごのしま) 男女群島
別名は、天両屋(あめふたや)
日本書紀
日本書紀の記述は、基本的に伊奘諾(イザナギ)・伊奘冉(イザナミ)が自発的に動いて、国産みを進めていくものである(巻一第四段)。
また、伊奘諾・伊奘冉のことをそれぞれ陽神・陰神と呼ぶなど、陰陽思想の強い影響がうかがわれる。
本書によれば、古事記と同様に、伊奘諾・伊奘冉は、天浮橋(あめのうきはし)に立って、天之瓊矛(天沼矛)で、渾沌とした大地をかき混ぜる。
この時、矛から滴り落ちたものが、積もって島となった。
ただし、この時、他の天つ神は登場しない。
比較表
『古事記』、『日本書紀』、『先代旧事本紀』、『天書』、『上記』の国産み順の比較したものである。