宝物集 (Hobutsu shu (A Collection of Treasures))
宝物集(ほうぶつしゅう)は平安時代末期の仏教説話集。
著者は平康頼(たいらのやすより)。
別名は「康頼宝物集」。
治承年間(1177~1181)の成立。
本によって一巻・二巻・三巻・七巻の違いがあり、本文の異同も甚だしい。
原型に近いのは一巻本だという。
嵯峨釈迦堂(清涼寺)での僧俗の対話形式をとり、多数の説話を援引し、仏法こそが至高の宝物であると語る。
概して四部に分けることができ、第1部と第2部は、全体から見る序章のようなものである。
第3部から、「この世で一番の宝物は何か?」ということが議論になり、最終的には第4部で「仏法こそが第一の宝」だということに落ち着く。
世間で大切だとされているものは功罪半ばして、幸せになる反面、不幸せにもなるのだから、何よりも尊いものは世俗を越えた仏法だ、という教えを説いている。
作者平康頼(法名性照)は後白河院の北面の武士で、検非違使兼衛門府に任ぜられたが、安元三年(1177)、鹿ケ谷の陰謀に預かり、事敗れて鬼界ヶ島(薩摩沖の硫黄島)に流刑されたが、翌年、中宮平徳子平産のための大赦によって召還され帰京。
その後は東山 (京都府)双林寺に住み、この説話集を編んだ。
「新日本古典文学大系」(岩波書店)所収。