当世書生気質 (Tosei Shosei Katagi)
当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)は、坪内逍遙(春の屋おぼろ)の小説。
17巻。
明治18~19年刊行。
逍遥はかねて『遊学八少年』という戯作の構想を抱いていた。
勧善懲悪を否定し、写実主義を主張した文学論『小説神髄』の執筆に続いて、明治18年4月に書き始め、6月に『一読三歎 当世書生気質』第1巻を刊行。
好評のため翌年1月までに第17巻を刊行した。
明治初年の書生社会の風俗と気質をうつすことを主眼として、下宿生活、牛肉屋、楊弓店などで書生らが遊ぶ様子も描く。
日本近代写実小説の第一として、『小説神髄』に展開された理論の具体化であるとされる。
ただし、文体は戯作の影響が強かった。
また、芸妓が筋の中心には上野戦争(彰義隊のたたかい)で生き別れになった兄妹の再会など、通俗的な側面もあった。
なので、作者は晩年、『逍遙選集』を編集したときに、この作品などの小説類を、すべて〈別冊〉にくくりこんだ。
この小説は、当時から世評がたかく、長く読み継がれた。
そのため、作中の〈野々口清作〉なる人物のモデルと誤解されるのを苦にした野口英世が、清作という本名を英世に変えたという、思わぬエピソードも生んだ。