絵入源氏物語 (Eiri Genji monogatari)

絵入源氏物語(えいりげんじものがたり)とは、江戸時代に出版された源氏物語の版本である。
江戸時代には多くの源氏物語の版本が出版されたが、絵入源氏物語は源氏物語の版本としては最も早い時期に出され、広く流布したものである。

概要
それまでの源氏物語は平安時代に成立して以後、すべて写本の形で存在しており、1冊ずつ人の手で写さなければならないものであるために作成に手間と時間がかかり、一般の人々が容易に入手出来るものではなかった。
(写本を手に入れることが出来ない多くの人々は、数多くの種類が作られた「梗概書」と呼ばれるダイジェスト的な書物によって源氏物語に親しんでいた。)
そのような中で、絵入源氏物語は一般多数の人々に読みやすい『源氏物語』として提供された最初のテキストである。

絵入源氏物語は長年にわたり少しずつ内容を変えて何度も刊行されているが、最も広く普及したのは1653年に刊行されたものであり、一般には「慶安本・承応三年版」と呼ばれている。
本書を編集したのは蒔絵師を本業とした歌人である山本春正である。

絵入源氏物語の持つ多くの特徴は、これ以後に出た源氏物語の版本である『首書源氏物語』や『湖月抄』などでも概ね踏襲されており、これ以後の多くの源氏物語の版本の基本的な形となった。

内容
絵入源氏物語は以下のような内容で全60冊からなっている。

源氏物語本文54帖・54冊
「源氏目案」3冊
「引歌」1冊
「系図」1冊
「山路の露」1冊

本文
絵入源氏物語の本文はおおむね青表紙本系統の本文であり、中でも三条西家本系統の本文に近いものになっている。
これは当時最も重要視されて、よく利用されていたのがこの系統の本文であったからだと考えられている。

また、源氏物語本文に濁点・読点・振り仮名・傍注などを付して読みやすくするという工夫が加えられている。
これだけあれば他の書物を必要とせずに源氏物語を理解できるように工夫されている。

挿絵
絵入源氏物語には「絵入」の名が表す通り、それぞれの場面の理解に役立つ226枚に及ぶ挿絵が付されている。
これらの挿絵の版下は全て蒔絵師である編者の山本春正が描いたものと見られている。

データベース

国文学研究資料館の「原本テキストデータベース」事業の一環としてCD-ROM化されたものが販売されている。

『源氏物語(絵入)』(岩波書店、1999年7月28日) ISBN 4-00-130093-1

[English Translation]