醒睡笑 (Seisuisho (Laughter to Wake Readers from Their Sleep))
醒睡笑(せいすいしょう)は庶民の間に広く流行した話を集めた笑話集。
著者は茶人や文人としても知られる京(京都)の僧侶、安楽庵策伝。
8巻1,039話の話を収録している。
「眠りを覚まして笑う」の意味で『醒睡笑』と命名された。
この命名時点を完成とみて1623年(元和 (日本)9年)成立とする資料と、後述の板倉重宗への献呈と奥書の付与の時点を完成と見て1628年(寛永5年)成立とする資料とがある。
「醒酔笑」と記す資料もあるが正当ではない。
概説
策伝の導入部では、「策伝それがし小僧の時より、耳にふれておもしろくをかしかりつる事を、反故の端にとめ置きたり」と話を収集した過程を述べている。
収録されている話の中には、『無名抄』『宇治拾遺物語』に由来するものがあり、同時代に発行された『戯言養気集』と『昨日は今日の物語』と共通するものもある。
それらは、策伝が直接引用したのか、巷間に伝わっていたものを採用したものか不明である。
元和元年(1615年)の頃、策伝が板倉重宗の前で話した話が面白く、著書として纏めるように薦められたことから『醒睡笑』が著されたという。
策伝が完成した『醒睡笑』を重宗の元に届けた折り(1628年:寛永5年3月17日)、重宗と同席した子・板倉重郷(板倉侍従)に献呈された(実際には重宗への献呈)。
この経緯は、重宗による奥書に記されている。
影響
『醒睡笑』は、後の咄本(はなしぼん)や落語に影響を与えた。
例えば、初代露の五郎兵衛による『軽口露がはなし』(1691年、元禄4年)に記載された88話中、28話が『醒睡笑』に由来する噺である。
策伝が近世落語の祖と言われる所以である。
現代でも『醒睡笑』に由来する子ほめをはじめ複数の落とし噺が演じられる。
また、小辺路・大辺路の記事で触れているように、現代では歴史的な資料としても利用されている。
原典の構成
巻の一
謂えば謂われる物の由来(よくも謂えたものだというこじつけばなし)
落書(風刺を含んだ匿名の投書(落書))
ふわとのる(「ふわっ」と乗る:煽てに乗ること)
鈍副子(どんふうす:鈍物の副司(血の巡りの悪い禅寺の会計係)
無知の僧(お経もろくに読めない坊主のはなし))
祝い過ぎるも異なること(縁起の担ぎすぎの失敗談)
巻の二
名付親方(変な名前をつける名付親)
貴人の行跡(身分の高い人の笑いのエピソード)
空(愚か者の笑い)
吝太郎(けちんぼの笑い)
賢だて(利巧ぶる人の間抜け話)
巻の三
文字知り顔(知ったかぶりの間抜けさ)
不文字(文盲なのにそれを気が付かないふりをする。おかしさ)
文のしなじな(機知にとんだ手紙の数々)
自堕落(ふしだら者の犯す失敗談)
清僧(女性と交わる罪を犯さない坊主の話)
巻の四
聞こえた批判(頓智裁判)
いやな批判(不合理な裁判)
そでない合点(見当はずれ・早合点)
唯あり(味のある話)
巻の五
きしゃごころ(やさしい風流ごころ)
上戸(酒飲みの珍談・奇談・失敗談)
巻の六
稚児のうわさ(稚児から聞いた内緒ばなし)
若道知らず(男色のおかしさ)
恋の道(夫婦間の笑い)
吝気(やきもちばなし)
詮無い秘密(くだらない秘密)
推は違うた(推理がはずれてがっかりした話)
うそつき(ほら話)
巻の七
思いの色をほかにいう(心に思ってることは態度に出てしまうという笑い話)
言い損ないはなおらぬ(失言を何とか取り繕うとするおかしさ)
似合うたのぞみ(たかのぞみは失敗するという話)
廃忘(失敗するとあわてるという話、蒙昧すること)
うたい(謡曲の文句に題材をとった笑い話)
舞(舞の台本を聞きかじった無知な人の話)
巻の八
頓作(即席頓智話)
平家(平家物語を詠う琵琶法師にまつわる滑稽談)
かすり(語呂合わせや駄洒落)
秀句(秀でた詩文をもとにした言葉遊び)
茶の湯(茶道の心得が無いために起こすしくじり話)
祝い済まいた(めでたし、めでたしで終わる話)