柏尾馬之助 (KASHIO Umanosuke)
柏尾 馬之助 （かしお うまのすけ ・ Kashio Umanosuke、天保9年（1838年）- 明治元年4月8日 (旧暦)（1868年4月30日））は幕末の阿波国出身の人物。
はじめ新徴組で活躍し、倒幕派志士に転じた。
北辰一刀流剣術の剣豪でもあった。
浪士組六番隊、新徴組での役職は、剣術教授方（代稽古）、組頭、肝煎等。
新徴組脱隊後は、維新の志士として尊王・倒幕運動を支援し、明治維新に助力している。
生涯
生誕
天保9年（1838年）阿波国美馬郡貞光に生まれる。
現在の徳島県美馬郡つるぎ町にあたる。
蜂須賀家（松平阿波守）の家来、柏尾嘉蔵（賀造）の次男。
（兄は柏尾元左エ門）
剣術道場
下総国佐原（現・千葉県佐原市）で、北辰一刀流の剣術道場を営んでいた。
弟子の一部は、後に新選組に入隊している。
浪士組 六番隊
文久3年（1863年）尊皇攘夷急進派団体「虎尾の会」の中心人物、清河八郎・山岡鉄舟・村上俊五郎・石坂周造らと「浪士組」を結成。
（村上と柏尾は同郷で阿波から昵懇の仲で、共に佐原に居を構え、剣術も北辰一刀流の同門であったが、柏尾が虎尾の会に属していた記録は無い）。
浪士組は、清河が前年（文久2年・1962年）山岡を通じて江戸幕府に建言した建白書「急務三策」によって、攘夷団体として幕府の御墨付を得ていた。
幕府としては「治安を脅かす尊皇攘夷・勤皇派浪士を一括りに管理出来る、都合の良い団体」を作る心算であった。
しかしそれは、清河の「幕府公認の先鋭的な尊皇攘夷団体」を作る為の、幕府の裏を書いた策略だった。
文久3年（1863年）2月、柏尾は村上（組頭）と、浪士組六番隊で江戸を出立し、中山道を上洛。
京都壬生村（現、京都府京都市中京区壬生）到着までには、芹沢鴨ら水戸の攘夷過激派や近藤勇・土方歳三・沖田総司・永倉新八ら天然理心流試衛館一派も合流。
浪士組六番隊は、後に幕末を賑す錚々たる人物が集まった。
壬生村宿割では、柏尾・村上らは壬生村会所、芹沢・近藤らは八木家と分れて宿を採っていた。
この宿割りは、直後の浪士組分裂時に大きな影響を及ぼす事となる。
幕府の意表を突く、清河の尊皇攘夷の上書が朝廷に受理され、朝廷の勅諚を受けた浪士組は、同年3月京都を出立して江戸へ向かう。
しかし、柏尾や村上と同じ六番隊ではあるが、清河の幕府への裏切りとも取れる行動に反発した隊員、近藤・芹沢ら主に八木家宿泊組と、根岸友山一派らは壬生村に残る事となり袂を別かつ。
壬生村に残った浪士組隊員は壬生浪士組を名乗り、後に新撰組となっている。
（根岸友山は、新選組近藤一派に因る粛清が始まると、壬生浪士組を離脱し新徴組に合流）。
同年4月、清河が、浪士組を尊王・倒幕運動の切札に使うと危惧した幕府は、佐々木只三郎ら刺客を差向け麻布一ノ橋にて清河を暗殺。
前後して虎尾の会出身者は村上・石坂ら多くが捕縛され、浪士組は解体される事となった。
新徴組 剣術教授方
清河殺害から間を置かず、浪士組は幕府により再組織され、江戸市中の治安機関『新徴組』として、大きく方向性を変える。
屯所は江戸本所 (墨田区)（現・東京都墨田区本所 (墨田区)）。
元治元年（1864年）には庄内藩御預かりとなる。
柏尾は撃剣試合で才能を認められ、新徴組剣術教授方の一人に任命される。
山田官司（新徴組取締・剣術教授方、北辰一刀流の兄弟子）に代わり、隊員に稽古を付ける傍ら、隊の組頭としても先頭に立ち、江戸市中の警戒業務も担っていた。
しかし労咳（結核）を患い、度々喀血することもあった。
新徴組脱退－維新の志士として
庄内藩から新徴組への影響が大きくなり、佐幕団体への傾向を強めると新徴組を脱隊する。
それと前後し、公武合体派は基より尊皇・倒幕派も柏尾に接近、志士として広く維新に力を注ぐようになる。
幕府の勝海舟や、海援隊 (浪士結社)の坂本龍馬らとも懇意であった。
帰郷
晩年、養生のため阿波（美馬郡貞光）へ帰郷。
それでもなお、尊皇倒幕、勤皇派武士を屋敷に匿うなど、最後まで維新に助力する姿勢に変わりは無かった。
明治元年4月8日（1868年4月30日）没。
近代の幕開けと共に、人生の幕を下ろす。
戒名 武堅院 義秀勝遠日行居士
墓所は故郷、徳島県美馬郡つるぎ町貞光の柏尾家墓地内であった。
（現在は徳島市内に移されている）。
没後、父の嘉蔵は、馬之助の妻（千葉周作の近親。北辰一刀流の小太刀術の使い手）に、千葉の実家に帰る事を勧めた。）
彼女は帰郷の際、千葉家より持参していた短刀を一振り、柏尾家に残している。
その他
家紋
家紋は丸に三柏紋（まるにみつがしわもん）。
名
「柏尾右馬之助」「柏尾右馬助」等の名を使っている場合もあるが、墓碑、系図では「柏尾馬之助」と記されている。
新撰組後期の平隊士 柏尾一郎 は別人。
写真
写真が柏尾家末裔に残されている。
痩せ型、右利き。
東と西（新徴組と新選組）
新徴組剣術教授方の柏尾馬之助、新撰組撃剣師範の沖田総司。
晩年の思想は、維新（柏尾）、佐幕（沖田）と正反対ではあるが、共に若くして天才肌の剣客、教授方師範。
労咳（結核）を患い夭折。
没年も同じ1868年と共通点も多い。