藤原陳忠 (FUJIWARA no Nobutada)
藤原 陳忠(ふじわら の のぶただ、生没年不詳)は、平安時代中期の中流貴族。
藤原南家藤原黒麻呂。
父は大納言藤原元方。
今昔物語集の逸話
今昔物語集 巻28「信濃守藤原陳忠落入御坂語 第三十八」
信濃守の任期を終え京へ帰還する陳忠。
信濃・美濃国境の神坂峠を過ぎるとき、乗っている馬が橋を踏み外し、馬ごと深い谷へ転落した。
随行者たちが谷を見下ろすと、とても生存しているようには思われなかった。
しかし、谷底から陳忠の「かごに縄をつけて降ろせ」との声が聞こえ、かごを降ろした。
引き上げてみるとかごには陳忠ではなくヒラタケが満載されていた。
再度かごを降ろし、引き上げると今度こそ陳忠がかごに乗っていたが、片手に一杯のヒラタケを掴んでいる。
随行者たちが安心し、かつ呆れていると、陳忠は次のように言い放った。
「転落途中に木に引っかかってみれば、すぐそばにヒラタケがたくさん生えているではないか。」
「宝の山に入って手ぶらで出てくるのは悔やみきれない。」
「『受領は倒るるところに土をつかめ』と言うではないか。」
陳忠の名は、『今昔物語集』巻28「信濃守藤原陳忠落入御坂語 第三十八」の逸話で広く知られている。
(右記参照)
この逸話は、受領の貪欲さをよく表すものとされ、また同時に、この逸話によって、陳忠は貪欲な受領の典型例として認識されることとなった。
神坂峠に近い長野県阿智村園原には、今昔物語集の逸話に基づく「藤原陳忠碑」が建立されている。