藤原隆季 (FUJIWARA no Takasue)
藤原 隆季（ふじわら の たかすえ、大治2年（1127年） - 元暦2年1月11日 (旧暦)（1185年2月12日））は平安時代後期の公卿。
父は中納言・藤原家成、母は加賀守・高階宗章の女、室に藤原忠隆の女、子に藤原隆房、隆保、隆雅がいる。
生涯
鳥羽天皇第一の寵臣・藤原家成の嫡男として生まれる。
早くから鳥羽院に近習して、長承2年（1133年）、7歳で従五位下に叙せられる。
その後、但馬国・讃岐国・越後国・土佐国の受領を経て、右兵衛佐、左馬頭を歴任する。
保元元年（1156年）7月、保元の乱で戦功を挙げた源義朝が左馬頭に任じられたため、左京大夫に遷る。
保元3年（1158年）従三位に昇り公卿に昇進した。
平氏への接近
家成は、平忠盛の正室・藤原宗子（池禅尼）の従兄弟であり、若い頃の平清盛はしばしば家成の邸に出入りするなど両家の関係は親密だった。
隆季も平氏と友好関係を築くことで自らの地位の保全を図ろうとした。
隆季の妹は清盛の嫡子・平重盛の妻となっていたが、隆季も自らの嫡子・隆房の妻に清盛の娘を迎えた。
さらに、清盛の娘・平徳子の立后に際して中宮大夫に抜擢されるなど親族同様の待遇を受けた隆季は、応保元年（1161年）に参議となってから、検非違使別当・権中納言・中納言と急速に昇進、仁安 (日本)3年（1168年）にはついに父の極官を越えて権大納言となった。
大国受領系の院近臣でありながら「当世の有識」（『吉記』）と称されて実務にもすぐれ、後白河天皇の執事別当に補されて院中の権を執った。
その間の長寛3年（1163年）、興福寺・延暦寺の抗争事件に際して、議定の場で親平氏の延暦寺を支持したことで興福寺の怒りを買い、放氏される（興福寺の強訴の一環として、氏寺・氏社に不利益をもたらした氏人の追放を興福寺別当から氏長者に通告する、追放が解除されない限り朝廷に出仕できない）、異母弟の藤原成親（母は藤原経忠の女）が後白河の平氏打倒計画に参加して処刑される（鹿ケ谷の陰謀）などの政治的危機もあったが、平氏との友好関係を維持した隆季の立場が揺らぐことはなかった。
治承のクーデターと高倉院政
平滋子の死後、不協和音を発していた後白河と清盛の関係は治承3年（1179年）11月、ついに破局を迎えた。
清盛は京を軍事的に制圧すると、関白・松殿基房を罷免して追放、39名に及ぶ反平氏公卿・近臣を解官、後白河法皇を鳥羽殿に幽閉して院政を停止した（治承三年の政変）。
その中には、清盛の異母弟・平頼盛、娘婿・花山院兼雅も含まれていた。
この時、隆季は大宰大弐・藤原親信の後任として大宰帥に任じられることになり世の非難を浴びた。
正帥は「親王任ずる所の官」（『玉葉』）で権帥・大弐になることが慣例だったためである（紛糾したためか、結局は大宰権帥となることで落ち着いている）。
平氏の重要拠点である大宰府を任されたことは、隆季に対する清盛の厚い信頼を物語るものといえる。
治承4年（1180年）2月21日、高倉天皇は皇太子・言仁（ときひと）親王に譲位（安徳天皇）、高倉院政が開始された。
隆季は高倉上皇の執事別当となり、3月の厳島御幸にも供奉した。
しかし、帰京直後の5月に以仁王による平氏討伐の計画が発覚した（以仁王の挙兵）。
以仁王が興福寺へ逃亡したとの報告を受けて27日、高倉は公卿を召集して対応策を協議させた。
興福寺の動きには慎重に対応すべきとの意見が大勢を占める中、隆季は土御門通親とともに興福寺の即時追討と末寺・荘園の没収を強硬に主張して、出席していた九条兼実と激論に及んだ。
兼実は日記に「隆季・通親の意見は平家に迎合したもの」と記して非難している。
遷都が計画された福原京福原行幸にも高倉に従って随行するが、高倉上皇の容態悪化・東国の反乱・親平氏の延暦寺の強い要請などにより、11月には平安京還幸となった。
翌年正月、高倉上皇は崩御し、隆季は近臣として素服を賜わった。
やがて清盛も没して、平氏政権はその主柱を失い迷走・解体への道を歩むことになる。
寿永元年（1182年）、隆季は権大納言・大宰権帥を辞任して出家、元暦2年（1185年）に死去した。
隆季は一族の六条藤家の影響で和歌にも秀で、詞花和歌集などの勅撰集に入集している。
嫡子の隆房は平氏の都落ちに同道せず、後白河法皇の近臣として朝廷内に勢力を保つことに成功した。
官歴
※日付＝旧暦
長承2年（1133年）（7歳）
9月18日蔵人
9月20日従五位下（中宮・藤原聖子御給）
9月21日但馬守
長承3年（1134年）（8歳）
2月22日右兵衛佐兼任
閏12月5日従五位上（待賢門院御給）
保延2年（1136年）（10歳）
4月7日正五位下
保延3年（1137年）（11歳）
正月4日従四位下（鳥羽法皇御給）
正月30日左馬頭
保延4年（1138年）（12歳）
12月29日讃岐守。
左馬頭如元
保延6年（1140年）（14歳）
2月26日正四位下
久安2年（1146年）（20歳）
12月29日越後守。
左馬頭如元
仁平4年のち改元して久寿元年（1154年）（28歳）
3月11日左馬頭停任（石清水臨時祭に参勤せず）
5月16日左馬頭還任
久寿2年（1155年）（29歳）
正月28日土佐守。
左馬頭如元
久寿3年のち改元して保元元年（1156年）（30歳）
7月11日左京大夫遷任。
左馬頭辞任（所望なしといえども、源義朝に譲る）
保元3年（1158年）（32歳）
11月26日従三位
永暦2年のち改元して応保元年（1161年）（35歳）
正月23日正三位
9月13日参議に補任
応保2年（1162年）（36歳）
正月27日讃岐権守兼任
長寛3年のち改元して永万元年（1165年）（39歳）
8月17日左兵衛督。
検非違使別当
永万2年のち改元して仁安 (日本)元年（1166年）（40歳）
4月6日右衛門督
6月6日権中納言。
右衛門督如元
6月8日検非違使別当如元
7月15日左衛門督
仁安2年（1167年）（41歳）
正月28日従二位
2月11日中納言。
左衛門督・検非違使別当如元
仁安3年（1168年）（42歳）
7月3日左衛門督・検非違使別当辞職
7月30日帯剣を許される
12月13日権大納言
嘉応3年のち改元して承安 (日本)元年（1171年）（45歳）
正月6日正二位
承安2年（1172年）（46歳）
2月10日中宮大夫兼任
治承2年（1178年）（52歳）
7月4日中宮大夫辞任（娘の死去）
治承3年（1179年）（53歳）
11月20日大宰権帥兼任
治承4年（1180年）（54歳）
2月21日新院（高倉上皇）別当
養和2年のち改元して寿永元年（1182年）（56歳）
3月権大納言・大宰権帥を辞任
5月24日出家（病のため）