藤原道雅 (FUJIWARA no Michimasa)
藤原道雅（ふじわら の みちまさ、正暦三年（992年） - 天喜二年7月20日 (旧暦)（1054年8月25日））は平安時代の歌人・公卿。
通称は道雅三位、荒三位など。
中関白藤原道隆、高階貴子の孫であり、一条帝皇后宮藤原定子の甥にあたる。
父は儀同三司藤原伊周、母は大納言源重光女。
妻は紫式部の夫山城守藤原宣孝の娘（紫式部の娘か否かは不明）で中古三十六歌仙のひとり上東門院中将をもうける（中古歌仙伝）。
ほかに平惟仲女がいたが、離婚して皇藤原妍子に仕え、歌人として大和宣旨と号した（大鏡）。
子に僧覚助 (僧)がある。
幼名を松君と言い、祖父道隆に溺愛されて育つが、長徳元年(995年)道隆は死去。
翌年、父伊周が花山天皇に対し弓を射掛けると言う不敬事件で大宰権帥に左遷される。
長保六年(1004年)、14歳で従五位下に叙せられる。
寛弘八年（1011年）には東宮権亮となって敦成親王（後一条天皇）に仕え、長和五年(1016年)正月、後一条天皇践祚の際には蔵人頭に補せられ、翌月従三位に叙せられた。
しかし、同年九月に斎宮を退下し帰京した当子内親王と密通し、これを知った内親王の父三条天皇の怒りに触れて、勅勘を被った。
万寿元年(1024年)12月6日に花山天皇の皇女が夜中の路上で殺され、翌朝、野犬に食われた酷たらしい姿で発見された（『小右記』）。
この事件は京の公家達を震撼させ、検非違使が捜査にあたり、翌万寿2年(1025年)7月25日に容疑者として法師隆範を捕縛、その法師隆範が藤原道雅の命で皇女を殺害したと自白する。
この事件は結局はうやむやにされるが、翌年の万寿三年(1026年)に左近衛中将を罷免され右京権大夫（正五位上相当官）に落とされる。
その後、出世できぬまま天喜二年（1054年）七月、出家の直後薨ず。
『小右記』によると花山天皇の皇女を殺させた他、敦明親王の雑色長を凌辱した、博打場で乱行した、など乱行の噂が絶えなかったらしい。
このため、世上「荒三位」「悪三位」などと呼ばれたという。
その一方和歌には巧みであり、中古三十六歌仙の1人としても知られている。
小倉百人一首には、次のようなの歌が取られている。
今はただ思ひ絶えなんとばかりを人づてならで言ふよしもがな
後拾遺集の詞書には
「伊勢の斎宮わたりよりまかり上りて侍りける人に、忍びて通ひけることを、おほやけも聞こしめして、守り女など付けさせ給ひて、忍びにも通はずなりにければ、詠み侍りける」とある。