奈良線 ((JR) Nara Line)
奈良線(ならせん)は、京都府木津川市の木津駅 (京都府)から京都府京都市下京区の京都駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(幹線)である。
全線が大都市近郊区間に含まれる。
関西本線の支線としての沿革を持つため、正式な起点は木津駅だが、列車運行上は京都から木津へ向かう列車が下り(列車番号は奇数)、逆が上り(同偶数)となっている。
以下路線データを除き特記なければ、京都から木津へ下り方向に記述する。
ラインカラーは茶色(■)であり、選定理由は「二本の古都を結ぶクラシックな落ち着いたイメージ」とされている。
路線データ
管轄(事業種別):西日本旅客鉄道(鉄道事業者)
路線距離(営業キロ):34.7km
軌間:1067mm
駅数:19駅(起終点駅含む)
複線区間:新田~宇治間、JR藤森~京都間
電化区間:全線電化(直流1500V)
閉塞 (鉄道):自動閉塞式(複線区間)、単線自動閉塞式(単線区間)
保安装置:自動列車停止装置
運転指令所:新大阪総合指令所
最高速度:110km/h(複線区間)、95km/h(単線区間)
木津駅を除き西日本旅客鉄道京都支社の管轄である(木津駅は同西日本旅客鉄道大阪支社が管理)。
概要
線路名称として京都~木津間が奈良線と名付けられているが、その全区間が京都府内にあり、奈良県内には全く路線がない。
これは当初奈良鉄道によって京都~奈良間が建設されたものの、関西鉄道に合併された後に大阪~名古屋ルートの一部として木津以南を分離された、との経緯による。
ただし、列車は木津駅から関西本線(大和路線)に入って奈良県の奈良駅まで運行される。
JR西日本は1988年3月13日改正でアーバンネットワークの各路線に愛称路線名(JR京都線・JR神戸線など)を定めたが、奈良線については見送られた。
近畿日本鉄道にも近鉄奈良線があるため、「JR奈良線」と案内されることもある。
日本国有鉄道時代には「国鉄奈良線」と案内されており、案内板の英字表記も「JNR」を入れていた。
近鉄奈良線は難波~奈良で大和路線と対抗関係にあり、JR奈良線が対抗関係にあるのは近鉄京都線である。
並行する京阪宇治線や近鉄京都線は以前から多数の列車が運行されていたのに対し、奈良線は国鉄末期の1984年まで鉄道の電化がされず、電化後も国鉄民営化までのしばらくは国鉄105系電車の2両編成などが細々と走る小さなローカル線でしかなかった。
しかし、JR西日本が発足して以降にアーバンネットワークの中に当線を組み込んでからは、列車の4両編成化(一部は6両編成)、部分複線化、「みやこ路快速」などの快速列車を始めとする列車の増発など、急速に輸送改善が図られた。
現在では、沿線にある宇治市の平等院などへの観光や、城陽市など京都府南部地域からの通勤・通学路線としての性格が強くなっている。
しかし桃山~新田間で東側に大きく迂回する形となっており、城陽以南は町の中心部の外れを走るので並行する近鉄京都線とは京奈間・地域輸送共にまだ格差がある。
車両は大阪支社の奈良電車区のものを使用するが、駅設備面などは木津駅を除き京都支社が管理している。
全駅でJスルー・ICOCA、および東日本旅客鉄道(JR東日本)のSuica、東海旅客鉄道(JR東海)のTOICA、またスルッとKANSAIのPiTaPaが使用できる。
なお城陽駅以南では無人駅も混在するため簡易改札となる。
運行形態
1984年に京都~和歌山駅間を奈良線・桜井線・和歌山線経由で結んでいた急行列車「くろしお_(列車)」が廃止されて以来、1991年までは普通列車のみの運転だった(特急のように、一時期臨時で特別急行列車が運転されたことがある)が、今ではみやこ路快速、快速列車、列車種別区間種別、普通列車の4種類の種別が運転されている。
みやこ路快速
奈良線の最速達の種別であり昼間を中心に運転される。
基本的に30分間隔の運転で宇治駅で普通列車と緩急接続を行う。
「みやこ路快速」の愛称は運行開始前に一般公募により決定した。
観光地である京都と奈良を結ぶ列車として、日本人だけでなく外国人観光客の利用も多い。
車両は全列車JR西日本221系電車で、4両編成または6両編成で運転される。
複線区間では最高速度が110km/hで運転され、それ以外では95km/hである。
標準所要時間は京都発奈良行が約44分、奈良発京都行が約47分である。
京都行きは途中上狛駅もしくは棚倉駅に2分ほど運転停車し、奈良行のみやこ路快速と行き違うため、上りと下りとで所要時間に若干差がある。
正月三が日の間は伏見稲荷への参詣客のため稲荷駅に臨時停車する。
沿革
2001年(平成13年)3月3日 - 運行開始。
2003年(平成15年)3月15日 - ダイヤ改正により東福寺駅、玉水駅に停車するようになる。
快速
朝夕ラッシュ時に運転される。
「みやこ路快速」が通過するJR小倉駅、新田駅 (京都府)にも停車する。
車両は全列車221系で運転され、4両編成または6両編成で運転される。
基本的に30分間隔の運転で宇治駅で普通列車と緩急接続を行う。
上記のみやこ路快速と同様、大和路線の快速が停車する平城山駅は通過する。
「みやこ路快速」が登場する2001年3月までの停車駅は京都・宇治・城陽(設定当初は通過)・木津・奈良で、車両には国鉄117系電車が使用されていたが、以後は奈良線では使用されていない。
朝夕は運用の都合上で大和路線と直通する列車がある。
区間快速
朝と夜間を中心に運転される。
当初は平日のみだったが、2006年3月18日のダイヤ改正から土曜・休日にも運転されるようになった。
宇治~奈良間は各駅に停車するが、かつては深夜などに行き違いの関係で宇治駅で普通を追い抜く木津方面行きの区間快速があったが、現在は区間快速の前を走る普通はそのまま終着駅まで逃げ切るダイヤに変更されている。
土曜・休日の20時台の京都発の1本に国鉄103系電車を使用する列車があるほかはすべて221系での運転である。
朝ラッシュ時には運用上の都合で大和路線から直通する列車がある。
奈良線の区間快速は大和路線区間快速との誤乗防止を図るため、「みやこ路快速」や快速と同じ橙色の文字色をラインカラーとして使用していたが、2008年3月のダイヤ改正に伴う種別幕の交換により、区間快速の種別幕は緑文字で表現されるようになり、ラインカラーは使われなくなった。
上狛駅以北の駅掲示時刻表では紫文字で記載されている。
普通
京都~宇治、城陽、奈良間で運転される。
昼間は京都~城陽間は15分間隔で運転されるが、城陽~木津間は30分間隔となる。
車両は基本的に103系で運転されるが、一部221系で運転される。
運用上の都合で早朝・深夜に大和路線と直通する列車がある。
過去には桜井線との直通列車もあったが1994年9月4日のダイヤ改正で奈良線と桜井線は系統分割された。
特急
臨時列車ではあるが、奈良線にも特急列車が運転されたことがある。
1987年から1988年にかけて「くろしお_(列車)」、1988年から1989年まで「くろしお_(列車)」の愛称で国鉄381系電車電車を用いて京都~白浜駅間に関西本線・関西本線阪和貨物線・阪和線経由で運転された。
1998年1月6日の読売新聞近畿版では2001年を目処に奈良線に(定期列車として)381系を用いて特急を運行するとの発表があったが、その後計画は中止されている。
みやこ路レジャー号
みやこ路レジャー号として京都~桜井間(京都~奈良間はみやこ路快速)で運転されていた時期があったが、現在は臨時も含め桜井線への直通列車は運転されていない。
宇治川花火大会
8月中旬に、宇治駅を最寄りとする宇治川花火大会が行われるが、通常ダイヤでは輸送力が確保できないため16時前から最終まで特別ダイヤで運転され、16時以降はすべて普通列車のみの運転で京都~宇治間は上下ともに約10分での運転となる。
一部、木津駅発着となる普通列車がある。
その他
単線当時の正月三が日は完全別立ての臨時ダイヤになり、快速が京都~宇治間各駅に停車するほか、宇治までは本数を増やして運転されていた。
年によっては桃山駅折り返し列車の設定もあった。
1992年頃には土曜・休日を中心に桜井線への直通列車が定期快速を延長して天理駅まで1時間あたり1本運転されていた。
このほか、日本全国から団体専用列車が乗り入れることがある。
特に毎年10月26日の天理教大祭時には「団体専用列車天理教輸送列車」と呼ばれる列車が京都駅から奈良線~木津駅~大和路線~奈良駅~桜井線経由で天理駅まで直通する。
使用車両
全て奈良電車区の所属である。
JR西日本221系電車
大和路線や大阪環状線などと共通運用で、2両、4両、6両編成が存在する。
主に「みやこ路快速」「快速列車」で4両編成や6両編成で運用されるが、奈良線には主に4両編成が入線する。
2両編成2本連結は休日ダイヤで見られる。
国鉄103系電車
奈良線の普通列車に使用される103系4両編成は、奈良線運用だけでなく、2本連結して8両編成にしたうえで大阪環状線やラッシュ時の大和路線区間快速にも運用される。
一部の車両が大阪環状線森ノ宮電車区からの転属車両に置き換えられている。
歴史
奈良鉄道によって京都~木津~奈良間が開通したが、うち京都~桃山間は初め現在の近鉄京都線のルートを通っていた。
東海道本線の馬場(現在の膳所)~京都間が東山トンネル経由の現在線に切り替えられた1921年のその日に、京都~稲荷間の旧東海道本線と稲荷~桃山間の新線が奈良線となり、京都~伏見間が廃止、伏見~桃山間が貨物線化された。
のちに京都~伏見間の旧線跡地は近鉄京都線の前身である奈良電気鉄道に払い下げられる。
年表
1879年(明治12年)8月18日 - 官営鉄道(後の東海道本線)として京都~稲荷~大谷駅 (滋賀県)間が開業。
稲荷駅開業。
1895年(明治28年)9月5日 - 奈良鉄道により京都~伏見間(3マイル23チェーン (単位)≒5.29km)が開業。
伏見駅開業。
京都駅は官設鉄道と共用。
11月3日 - 伏見~桃山間(1M9C≒2.19km)が延伸開業。
桃山駅開業。
1896年(明治29年)1月25日 - 桃山~玉水間(12M46C≒20.24km)が延伸開業。
木幡駅、宇治駅、新田駅、長池駅、玉水駅開業。
3月13日 - 玉水~木津間(4M50C≒7.44km)が延伸開業。
棚倉駅、木津駅開業。
4月18日 - 木津~奈良間が延伸開業し、京都~奈良間が全通。
4月21日 - 東寺臨時駅開業。
1897年(明治30年)4月1日 - 奈良鉄道京都駅を七条駅に改称。
1902年(明治35年)5月3日 - 上狛駅開業。
11月12日 - 営業距離の単位をマイル・チェーンからマイルのみに簡略化(21M48C→21.6M)。
1905年(明治38年)2月7日 - 奈良鉄道が路線を関西鉄道に譲渡。
1907年(明治40年)10月1日 - 関西鉄道が鉄道国有法。
1908年(明治41年)8月1日 - 七条駅を京都駅に統合。
1909年(明治42年)10月12日 - 線路名称制定、木津~京都間を奈良線とする。
1910年(明治43年)12月19日 - 宇治~木幡間に宇治川信号所開設。
1913年(大正2年)6月20日 - 伏見~京都間に八条信号所開設。
11月5日 - 宇治川信号所廃止。
1914年(大正2年)8月15日 - 八条信号所廃止。
1921年(大正10年)3月20日 - 宇治~木幡間に宇治川仮信号所開設。
8月1日 - 奈良線の京都~伏見間(3.3M≒5.31km)廃止。
伏見~桃山間(1.1M≒1.77km)の旅客営業を廃止。
東海道本線の京都~稲荷間(1.8M≒2.90km)を奈良線に編入。
稲荷~桃山間(2.6M≒4.18km)の新線開業。
1922年(大正11年)4月1日 - 宇治川仮信号所を宇治川仮信号場に変更。
1926年(大正15年)2月13日 - 青谷梅林仮停車場開業。
4月1日 - 宇治川仮信号場廃止。
1928年(昭和3年)9月3日 - 貨物支線 桃山~伏見間が廃止。
伏見駅廃止。
1930年(昭和5年)4月1日 - 営業距離の単位をマイルからメートルに変更(21.6M→34.7km)。
1933年(昭和8年)12月1日 - 青谷梅林仮停車場を山城青谷駅に格上げ。
1955年(昭和30年)7月15日 - 山城多賀駅開業。
1957年(昭和32年)12月27日 - 東福寺駅開業。
1958年(昭和33年)7月11日 - 城陽駅開業。
1961年(昭和36年)4月21日 - 黄檗駅開業。
1982年(昭和57年)3月2日 - 列車集中制御装置使用開始。
1984年(昭和59年)10月1日 - 京都~木津(~奈良)間が電化。
国鉄105系電車、国鉄113系電車による運転開始。
急行「紀ノ川」(京都~和歌山、奈良線・桜井線・和歌山線経由)廃止。
1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により西日本旅客鉄道に承継。
日本貨物鉄道が全線で鉄道事業者となる。
1991年(平成3年)3月16日 - 117系電車による快速列車を運転開始。
1992年(平成4年)10月22日 - 六地蔵駅開業。
城陽駅が快速停車駅となる。
1994年(平成6年)9月4日 -105系電車が撤退する。
(桜井線・和歌山線に運用を集中させる)
1997年(平成9年)3月8日 - JR藤森駅開業。
1999年(平成11年)5月10日 - 六地蔵駅が快速停車駅となる。
2001年(平成13年)3月3日 - 京都~JR藤森間、宇治~新田間複線化。
JR小倉駅開業。
区間快速と221系電車による「みやこ路快速」運転開始。
10月1日 - 東福寺駅が快速・区間快速停車駅となる。
2003年(平成15年)3月15日 - 東福寺駅と玉水駅がみやこ路快速停車駅、玉水駅が快速停車駅となる。
4月1日 - 日本貨物鉄道の第二種鉄道事業廃止。
2008年(平成20年)4月23日 - 山城青谷~木津間で自動列車停止装置導入。
4月27日 - 黄檗~山城青谷間でATS-P導入。
4月30日 - 京都~黄檗間でATS-P導入。
複線化について
単線区間であるJR藤森駅~宇治駅間、新田駅~木津駅間は検討段階としては根強く残っているが、まだ具体的な見通しはたっていない。
また、JR藤森駅~桃山駅間の国道24号線沿いや木幡駅~宇治駅間(黄檗駅付近)の京阪宇治線沿いは特に用地買収確保が難しい区間である。
予算も不足がちなため、最低でもこれ以上計画が進められるのは、嵯峨野線(山陰本線京都~園部間)が全線複線化開業する後である。
その他
近畿地方交通審議会で、将来、東海道本線(JR京都線)と直通運転する案が検討されている(大晦日の深夜から元日の早朝の終夜運転で実現していた時もあった)。
宇治市は黄檗駅~宇治駅間に新駅設置を構想している。
駅一覧
中間駅は六地蔵駅・宇治駅 (JR西日本)以外に直営駅が存在しない。
廃止区間
括弧内は京都駅起点の営業キロ。
京都駅 (0.00km) - 八条仮信号所 (0.80km) - 東寺仮停車場 (1.13km) - 伏見駅 (5.31km) - 桃山駅 (7.08km)
廃止信号場
括弧内は京都駅起点の営業キロ。
宇治川仮信号場 - 黄檗~宇治間(約13.8km)