近鉄けいはんな線 (Kintetsu Keihanna Line)

けいはんな線(けいはんなせん)は、大阪府東大阪市の長田駅 (大阪府)から奈良県奈良市の学研奈良登美ヶ丘駅を結ぶ近畿日本鉄道(近鉄)の鉄道路線。

2006年3月27日に「京阪奈新線」の仮称で建設されていた生駒駅から学研奈良登美ヶ丘駅までが開業し、それと同時にすでに東大阪線として開業していた長田~生駒間もけいはんな線に改称された。
また、相互直通運転を行っている大阪市営地下鉄中央線との総称として「ゆめはんな」という愛称が付けられている。

スルッとKANSAI対応カード・PiTaPa・ICOCAが使用できる。
Jスルーは自動改札機で使用することができないが、自動券売機での乗車券の購入は可能である。
また、東大阪線時代から引き続き建設費回収のための加算運賃が適用されている。

路線データ

管轄・路線距離(営業キロ):全長18.8km
近畿日本鉄道(軌道 (鉄道))
長田~鉄軌分界点間 5.1km
近畿日本鉄道(鉄道事業者)
鉄軌分界点~生駒間 5.1km
近畿日本鉄道(鉄道事業者)・奈良生駒高速鉄道(鉄道事業者)
生駒~学研奈良登美ヶ丘間 8.6km
軌間:1435mm
駅数:8駅、2信号場(起終点駅含む)
複線区間:全線
電化区間:全線電化(直流750V・第三軌条方式)
閉塞 (鉄道):自動閉塞式
保安装置:自動列車制御装置
最高速度:95km/h
車内案内装置設置率:100%

全線が大阪輸送統括部(旧上本町営業局)の管轄で、長田駅から新石切駅東方の鉄軌分界点までは軌道法による軌道、鉄軌分界点から学研奈良登美ヶ丘駅までは鉄道事業法による鉄道となっている。

概要

長田~生駒間は東大阪線として、沿線の宅地開発が進み混雑が激しくなった近鉄奈良線のバイパスとして建設された。
新石切以西は阪神高速道路13号東大阪線と国道308号に沿って走り、荒本~新石切間は高架になっている。
これは当時の旧建設省管轄下で道路と一体的に工事を行うためであり、高速道路の高架橋と鉄道の高架橋による一体的な構造物はこの東大阪線が日本初で、道路幅員が大きく取れない場合の有効手段として当時大きく注目されていた。
また、新石切~生駒間の生駒トンネル(4,737m)は、大阪電気軌道時代に造られた旧生駒トンネルの一部を再利用している。

生駒~学研奈良登美ヶ丘間は、大阪と関西文化学術研究都市(学研都市)を結ぶ路線として東大阪線を延伸する形で建設され、奈良県の生駒市北部および奈良市北西部に広がる住宅地群の足となる。
ただし、この区間は学研都市の中心地域である京都府相楽郡精華町から外れていることから、学研都市への路線というよりも、奈良県にあるベッドタウンから大阪都心への通勤・通学客のための路線という色が濃い。
この区間は全線の約6割がトンネルとなっている。
なお、学研奈良登美ヶ丘駅から新祝園駅・高の原駅方面への延伸計画もある(延伸計画)。

生駒~学研奈良登美ヶ丘間の開業時に東大阪線もけいはんな線に改称された。
また相互直通運転が行われている大阪市営地下鉄中央線と当路線の総称として「ゆめはんな」という愛称が公募によって付けられた。
これは、生駒駅で乗り換えることなく大阪市営地下鉄中央線本町方面と行き来できることをアピールするためである。
また、これに対して沿線地方公共団体である東大阪市は、駅名に東大阪の名を残して欲しいと同市役所の最寄り駅である荒本駅の駅名を東大阪駅に改称するよう近鉄に対して求めている。
ただし、これには莫大な費用がかかるため、一般的に自治体が負担すべき駅名変更費用を近鉄の負担とするよう現在両者が協議中である。

けいはんな線の開業と同時に、大阪市営地下鉄中央線と通しの駅ナンバリングが(旧東大阪線区間も含めて)割り当てられている。
また、荒本以東には発車メロディが開業6日前の2006年3月21日ダイヤ改正から使用されている(近鉄ではそれ以前にも近鉄名古屋駅4・5番線近鉄特急ホームの発車メロディとして、ファミリーコンピュータの効果音のような単一和音の「ドナウ川のさざ波」が使われている)。

東大阪線時代は、中央線との差別化を図るためか、近鉄のコーポレートカラーであるオレンジとスカイブルー(正確にはソーラーオレンジとアクアブルー、パールホワイトの3色を近鉄所有車両で使用している)を路線のイメージカラーに取り入れており、現在も近鉄所有車両や東大阪線時代からの既存駅設備にその名残が残っているが、けいはんな線への移行時に改めて路線イメージカラーを薄緑(ライムグリーン)に定めている(ただし近鉄車両の色は従来通り)。
これは前述の「ゆめはんな」の愛称制定により中央線のラインカラーと同系の色に合わせて一体感を図るためと思われるほか、大阪市営地下鉄今里筋線のラインカラーがオレンジ(柑子色)となったことから、同線との混同が起こることを避けるためとも思われる。

運行形態

長田駅から大阪市営地下鉄中央線コスモスクエア駅まで直通運転を行っている。
相互直通運転のため、グリーンラインが入った中央線の車両も運転されている。
また、延伸区間(生駒~学研奈良登美ヶ丘関)開業から全線でワンマン運転を実施しており、その運行補助のために全駅にプラットホーム赤外線検知方式を設置している。

生駒~学研奈良登美ヶ丘間の開業後は運転区間が延びることから所要時間を短縮するため、最高速度を第三軌条方式を採用している鉄道路線ではそれまでの70km/hから日本国内最高となる95km/hとし、これに先立ち行われた2006年3月21日のダイヤ変更時から旧東大阪線の区間も最高速度が70km/hから95km/hに引き上げられた。
学研奈良登美ヶ丘~長田間の標準所要時間は22分である。
なお、快速列車の運転も検討されていたが、これは見送られた。

現行ダイヤでは全列車の約半数が生駒折り返し列車であり、生駒折り返し列車は生駒到着後に東生駒信号場(車庫)まで回送して折り返す。
長田~生駒間の運行本数は、ラッシュ時で1時間あたり最大14本、昼間時間帯で毎時8本、生駒~学研奈良登美ヶ丘間はラッシュ時で1時間あたり8本、昼間時間帯で毎時4本である。
なお、2006年7月19日に一部ダイヤが変更され、夜間の学研奈良登美ヶ丘から東生駒車庫への回送列車2本が生駒行の営業列車に変更された。

自社車両

近鉄7000系電車
近鉄7000系電車

乗り入れ車両

大阪市交通局
大阪市交通局20系電車
大阪市交通局20系電車

車両基地

けいはんな線には、東生駒信号場東側(近鉄奈良線東生駒駅北東側)にある東花園検車区東生駒車庫と学研奈良登美ヶ丘駅西側にある東花園検車区登美ヶ丘車庫の2か所の車両基地がある。

東生駒車庫は長田~生駒間開業時に設置された車庫で、生駒~学研奈良登美ヶ丘間で試運転が開始された2005年11月頃までは現在の生駒~東生駒信号場間の下り(学研奈良登美ヶ丘方面)本線を車庫線として使用していた。
奈良線とも線路がつながっているが、けいはんな線用車両の鉄道車両の検査重要部検査や鉄道車両の検査全般検査などはこの連絡線を利用して東生駒車庫~奈良線~大和西大寺駅~近鉄橿原線~橿原神宮前駅~大和八木駅構内の渡り線~近鉄大阪線経由で五位堂検修車庫に回送して行う。
ただし、けいはんな線用車両は電車への供給電圧や集電方式が異なり、回送ルートとなる奈良・橿原・大阪の各線では自力回送ができないため、台車に装着されている集電装置(コレクターシュー)を外して3両単位で電動貨車2両(モト75形77+78)の間に挟まれて回送される。

登美ヶ丘車庫は、生駒~学研奈良登美ヶ丘間開業時に設置された車庫である。

建設の経緯

けいはんな線の計画は、1971年の都市交通審議会第13号答申で示された大阪市営地下鉄中央線を京都府の新田辺駅付近まで延伸する路線計画が原型となっている。

長田~生駒間

戦後、近鉄は沿線の宅地開発が進み混雑が激しくなった近鉄奈良線の混雑緩和策として石切駅~森ノ宮駅間のバイパス線を計画するものの、同時期に京阪電気鉄道が大和田駅 (大阪府)~森ノ宮間を、大阪市が4号線(現・中央線)を本町駅~森ノ宮経由で放出駅まで延伸する計画をそれぞれ立てたため、一部区間で重複することとなった。

話し合いの結果、近鉄と京阪は荒本駅までを、都心部は大阪市がそれぞれ建設して相互直通運転することとなった。
だが、結局大阪市が4号線を第三軌条式で建設してしまったため京阪は新線建設をあきらめ、残る近鉄が自社線内を架線式として架線式・第三軌条式両方に対応する車両を開発した上で4号線と相互直通する方針を固めたものの、大阪市が難色を示したため、近鉄も新線建設をあきらめるようになった。
このため、大阪市が独自に石切まで延長する計画も出したりもしていた。

その後しばらくこの話は放置されていたが、1971年に出された都市交通審議会答申第13号で「大阪市営地下鉄中央線を延伸して生駒駅まで緊急に整備すべき」とされたことから再び新線建設の機運が高まった。
しかし、市営モンロー主義を採る大阪市が市域外に新線を建設することに難色を示したため、1974年に大阪府の提案で最終的に大阪市が東大阪市長田駅 (大阪府)までを建設し、そこから先は近鉄が建設することで話がまとまった。

近鉄は1977年に長田~生駒間の免・特許を取得し、すぐに全額出資子会社の東大阪生駒電鉄を設立して免・特許を譲渡した後に工事に充て、1979年に日本鉄道建設公団(現・鉄道建設・運輸施設整備支援機構)のP線として工事が開始された。
奈良線のバイパスとして建設した経緯から一体的に経営することが望ましいと考えた近鉄は、工事がほぼ完了した1986年4月に東大阪生駒電鉄を吸収合併し、同年10月1日に長田~生駒間が近鉄東大阪線として開業した。
この手法は京阪鴨東線の建設でも活かされた。

生駒~学研奈良登美ヶ丘間

東端から白庭トンネル越しに東を望む。
トンネルの向こうに学研北生駒駅が見える。
両駅間は0.8km(2006年4月20日撮影)。

生駒駅以東については、1982年に国土庁(現・国土交通省)が発表した「関西学術研究都市基本構想」で、生駒~高の原駅間と同区間から分岐して精華町・西木津駅方面へ向かう路線が示され、1989年の運輸政策審議会答申第10号では、生駒~高の原間が2005年までに整備すべき路線、同区間から分岐して祝園駅付近(2004年の近畿地方交通審議会答申第8号では新祝園駅)までと高の原~木津駅_(京都府)方面までが整備を検討すべき路線として盛り込まれた。

当初は近鉄独自で事業にあたることが考えられていたが、建設費の補助を受けられる第三セクター方式を採ることになり、1998年に建設主体として第三セクター会社の奈良生駒高速鉄道が設立された。
完成後は同社が施設を保有する鉄道事業者、近鉄が運営にあたる鉄道事業者となる上下分離方式をとることになり、2000年に着工された。

また、開業目標も当初は2005年秋としていたが、用地買収に手間取り、また運転士の習熟訓練に時間がかかることから、半年ほど延びて、2006年3月27日に開業を迎えた。

歴史

1977年(昭和52年)3月23日 - 長田~鉄軌分界点間の軌道事業特許と鉄軌分界点~生駒間の鉄道事業免許を取得。

1977年(昭和52年)9月16日 - 東大阪生駒電鉄設立。

1977年(昭和52年)12月23日 - 長田~鉄軌分界点間の軌道事業特許と鉄軌分界点~生駒間の鉄道事業免許を東大阪生駒電鉄へ譲渡認可。

1986年(昭和61年)4月1日 - 近畿日本鉄道が東大阪生駒電鉄を合併。

1986年(昭和61年)10月1日 - 東大阪線として長田~生駒間が開業。
大阪市営地下鉄中央線大阪港駅まで相互直通運転開始。
東生駒車庫開設。

1987年(昭和62年)9月21日 - 生駒トンネル内で漏電によるケーブル火災発生。
通過中の電車が立往生して1人死亡。

1997年(平成9年)12月18日 - 大阪港トランスポートシステムテクノポート線(2005年7月1日より大阪市営地下鉄中央線に編入)の開業に伴い、相互直通運転区間をコスモスクエア駅まで延長。

1998年(平成10年)7月28日 - 奈良生駒高速鉄道設立。

1998年(平成10年)9月3日 - 京阪奈新線として鉄道事業免許取得。

2000年(平成12年)10月 - 京阪奈新線着工。

2004年(平成16年)8月26日 - 東生駒トンネル(3,600m)貫通。

2005年(平成17年)1月 - 正式路線名の「けいはんな線」と新設3駅の正式駅名を決定。

2005年(平成17年)10月26日 - けいはんな線・東大阪線・大阪市営地下鉄中央線の統一愛称を「ゆめはんな」に決定。
同時期に小学生などを対象とした絵画コンクールも開催。

2006年(平成18年)3月19日・3月20日 - 試乗会を実施(1日4回・応募制)。

2006年(平成18年)3月27日 - 生駒~学研奈良登美ヶ丘間が開業。
東大阪線をけいはんな線に改称し、長田~学研奈良登美ヶ丘間をけいはんな線とする。
同時に登美ヶ丘車庫と東生駒・登美ヶ丘両信号場も開設。

延伸計画

先述の通り、学研奈良登美ヶ丘駅から祝園(新祝園)・高の原方面への延伸計画があるが、当面は凍結される見込みである。
理由は概ね以下の通りとされている。

延伸ルートを一本化したいが、祝園(新祝園)、高の原のどちらに延伸すべきか具体的には検討されていないため
この延伸は京都府にも大いに有用であると考えられるが、京都府が延伸線建設費を出資することを拒んでいるため
沿線の開発があまり進んでいないということで、近鉄が建設に慎重なため
中央新幹線が奈良・京都府県境付近を通ることが計画されているが、どの辺りを通るか未確定であり、その接続路線としたい近鉄が慎重なため

その他の注意点

大阪市営地下鉄と近鉄の連絡乗車券(長田駅経由指定)を購入した場合、両社局が乗り入れている鶴橋駅、上本町駅 (大阪府)(谷町九丁目駅)、大阪阿部野橋駅(天王寺駅)、日本橋駅 (大阪府)(近鉄日本橋駅を含む)、難波駅(近鉄難波駅を含む)の各駅の直接乗り継ぎは出来ない

[English Translation]