阪急電鉄 (Hankyu Railway)
阪急電鉄株式会社(はんきゅうでんてつ、英語 Hankyu Corporation)は、大阪梅田駅と神戸市・宝塚市・京都市を結ぶ大手私鉄。
阪急阪神ホールディングスの子会社で、阪急阪神東宝グループに属する。
本社事務所は大阪府大阪市北区 (大阪市)にあるが、登記上の本店所在地は大阪府池田市栄町1番1号である。
平均利用者数195万人/日、営業キロ146.6kmに及ぶ、大手私鉄の一つである。
また、女性のみで構成される劇団「宝塚歌劇団」を運営していることでも知られる。
スルッとKANSAIでカードに印字される符号はHKである。
歴史
1907年に設立された箕面有馬電気軌道が、1910年3月10日に現在の宝塚本線・箕面線にあたる梅田駅~宝塚駅、石橋駅 (大阪府)~箕面駅を開業したのが始まり。
創業者の小林一三は経営安定のため沿線開発に力を入れ、住宅地分譲、宝塚新温泉、宝塚唱歌隊(後の少女歌劇団、現在の宝塚歌劇団)などの事業を多角的に展開した。
続いて阪神間の輸送に参入。
1918年、社名を阪神急行電鉄に改称。
現在まで続く略称の「阪急」はこれに由来する(後、正式社名にも採用される)。
阪神間に参入したことで、以後既に阪神間で都市間連絡電車を営業していた阪神電気鉄道とは激しく争うライバル関係となった。
1920年に神戸本線十三~神戸(後の上筒井駅)間を開業し、1936年には神戸市内の三宮駅へ高架線で乗り入れた。
なお、「電鉄」という語は、「電気鉄道」という語を商号に使用することに、鉄道省があくまで軌道法準拠の「電気軌道」である事を根拠として難色を示したことから、対策として小林一三が考え出した語で、以後軌道法監督下の各社が高速電気鉄道への脱皮を図る際に有効活用されることとなった。
1943年、戦時企業統合政策(陸上交通事業調整法)により京阪電気鉄道を合併、京阪神急行電鉄となる(この経緯については阪神急行電鉄京阪電気鉄道の統合と分離も参照)。
なお、このとき「阪急」と「京阪」の略称は公式には使用されなくなり「京阪神(急行)」とされたが、世間には定着せず、大阪市電の電停名でも「阪急阪神前」(梅田)・「京阪前」(天満橋)・「京阪神急行前」(天六)などと、混合して用いられていたといわれている。
戦後の1949年に京阪線・交野線・宇治線・京津線・石山坂本線が京阪電気鉄道として再分離。
かつて京阪の路線であった新京阪鉄道は阪急に残存し、京都本線・千里山線(後に千里線と改称)・十三線(後に京都本線へ編入)・嵐山線となった。
この時、略称も「京阪神」から「阪急」へ戻している。
1959年、梅田~十三間が3複線化され、京都本線のターミナルが天神橋駅(現・天神橋筋六丁目駅)から梅田駅になる。
1973年、阪急電鉄に社名変更。
1992年、後にスルッとKANSAIへ発展するラガールカードによる乗車カード「ラガールカード」を開始する。
しかし、バブル経済崩壊で茶屋町地区などの再開発事業の失敗による巨額の損失を蒙った。
追い討ちをかけるように、1995年1月17日の阪神・淡路大震災では、神戸本線・伊丹線・今津(北)線などが甚大な被害を受けたが、同年6月12日にほぼ全線が復旧、1998年には伊丹駅 (阪急)も再建された。
震災以降も、長引く消費不況や西日本旅客鉄道などとの激しい競合、少子化などの影響により輸送人員は減少。
不動産・ホテル事業の再編や、宝塚新温泉以来90年以上の歴史を持つ遊園地「宝塚ファミリーランド」の閉園、ポートアイランドにあった「神戸ポートピアランド」からの事業撤退(その後暫くは神戸市の手で運営を継続ののち、2006年閉園)など、グループ事業の再編が進められる。
その集大成として、2005年4月1日に、旧・阪急電鉄から鉄道、不動産、レジャー、流通の4事業を分割承継する新・阪急電鉄(阪急電鉄分割準備(株)から商号変更)と、ホテル経営を統括する阪急ホテルマネジメント、旅行業の阪急交通社の直営事業会社2社の合わせて3社に再編し、旧・阪急電鉄は持株会社阪急ホールディングス(現・阪急阪神ホールディングス)に移行した。
なお、2007年10月19日に創業100年を迎えた。
年表
1906年(明治39年)1月15日 箕面有馬電気鉄道創立発起人会設立。
1907年(明治40年)6月1日 箕面有馬電気軌道に社名変更。
1907年(明治40年)10月19日 箕面有馬電気軌道創立総会。
1909年(明治42年)9月25日 新淀川橋梁が竣工。
1910年(明治43年)3月10日 宝塚本線梅田~宝塚間、箕面線石橋~箕面間が開業。
1911年(明治44年)5月1日 宝塚新温泉(後の宝塚ファミリーランド)が開業。
1913年(大正2年)7月1日 宝塚唱歌隊(現在の宝塚歌劇団)を組織。
1918年(大正7年)2月4日 阪神急行電鉄に社名変更。
1920年(大正9年)7月16日 神戸本線 十三~神戸(後の上筒井)間、伊丹線が開業。
1921年(大正10年)4月1日 北大阪電気鉄道(1923年に新京阪鉄道へ事業譲渡)により、十三~豊津間(現在の京都本線・千里線の一部)が開業。
1921年(大正10年)9月2日 西宝線宝塚~西宮北口間が開業。
1924年(大正13年)10月1日 甲陽線が開業。
1925年(大正14年)6月1日 梅田阪急ビル(旧館)に阪急マーケットが開業。
1925年(大正14年)10月15日 新京阪鉄道(1930年に京阪電気鉄道へ合併)により天神橋~淡路間(現在の千里線の一部)が開業。
1926年(大正15年)7月5日 梅田~十三間が高架複々線化。
旧線は阪急北野線となる。
1926年(大正15年)12月18日 西宝線が全通。
今津線に改称。
1928年(昭和3年)1月16日 新京阪鉄道により淡路~高槻町(現在の高槻市)間が開業。
1928年(昭和3年)11月1日 新京阪鉄道により高槻町~西院間が開業。
1928年(昭和3年)11月9日 新京阪鉄道により嵐山線が開業。
1929年(昭和4年)4月15日 梅田駅に阪急百貨店が開店。
1931年(昭和6年)3月31日 京阪電気鉄道により新京阪線西院~京阪京都(現在の大宮)間が開業。
1932年(昭和7年)8月 演劇、映画の興行を主たる目的として、東京宝塚劇場(現在の東宝)を設立。
1936年(昭和11年)4月1日 神戸本線西灘(現在の王子公園)~神戸(現在の三宮)間が開業。
西灘~上筒井間は上筒井線となる。
1940年(昭和15年)5月20日 上筒井線を廃止。
1943年(昭和18年)10月1日 阪神急行電鉄が京阪電気鉄道を合併、京阪神急行電鉄となる。
1945年(昭和20年)5月1日 交野電気鉄道の事業を譲り受け、交野線とする。
1946年(昭和21年)11月20日 生産部を日興殖産株式会社(現・阪急産業株式会社)として分社化。
1949年(昭和24年)1月1日 北野線を休止。
1949年(昭和24年)12月1日 京阪線・交野線・宇治線・京津線・石山坂本線を京阪電気鉄道(新)として分離。
新京阪線を京都本線に改称。
1959年(昭和34年)2月18日 梅田~十三間が3複線化。
1963年(昭和38年)6月17日 京都本線大宮~河原町間が開業し、十三~河原町間が全通。
1967年(昭和42年)3月1日 千里山線が千里線に改称、北千里駅まで開通。
北千里駅に日本初の本格的な自動改札機設置。
1968年(昭和43年)4月7日 神戸本線が神戸高速鉄道・山陽電気鉄道と相互直通運転開始。
1969年(昭和44年)12月6日 千里線・京都本線が大阪市営地下鉄堺筋線と相互直通運転開始。
1973年(昭和48年)4月1日 阪急電鉄に社名変更。
1973年(昭和48年)11月23日 梅田駅の移転拡張工事が完成。
1988年(昭和63年)10月31日 オリックス・バファローズをオリエント・リース(現オリックス (企業))に譲渡。
1989年(平成元年)4月1日 プリペイドカード「ラガールカード」導入。
1989年(平成元年)12月7日 分社・持株会社化の準備のための完全子会社・阪急電鉄分割準備株式会社(現阪急電鉄)の登記上の設立年月日。
1992年(平成4年)4月1日 ストアードフェアシステム「ラガールスルー」開始。
1994年(平成6年)9月1日 日本初の不正乗車防止システム「フェアライドシステム」を導入。
1995年(平成7年)1月17日 阪神・淡路大震災で各線に被害。
同年1月23日までに京都本線、宝塚本線、神戸本線の一部などで運転再開。
1995年(平成7年)2月5日 今津線が全線復旧。
1995年(平成7年)3月1日 甲陽線が全線復旧。
1995年(平成7年)3月11日 伊丹線が新伊丹~伊丹(仮駅)間で運行再開。
1995年(平成7年)6月12日 神戸本線が全線復旧。
1996年(平成8年)1月1日 「ジェントルサウンドサービス」の一環として、駅・車内での案内を変更(詳細は特記事項参照)。
1996年(平成8年)3月20日 「ラガールスルー」を改良した関西圏の共通乗車カードシステム「スルッとKANSAI」開始。
1997年(平成9年)11月17日 宝塚本線で能勢電鉄日生中央駅まで乗り入れを行う直通特急日生エクスプレスの運転を開始。
1998年(平成10年)2月15日 山陽電気鉄道との相互直通運転を中止、神戸本線は新開地駅までの運転に。
1998年(平成10年)10月1日 今津(南)線、甲陽線でワンマン運転を開始。
1998年(平成10年)11月21日 伊丹駅本駅が完成。
伊丹(仮駅)~伊丹間は単線で運転再開。
1999年(平成11年)3月6日 伊丹(仮駅)~伊丹間が複線運転再開、震災から実に4年ぶりに完全復旧。
1999年(平成11年)4月1日 全路線の全車両で優先席を廃止(全車両の全座席を優先座席化)。
2002年(平成14年)10月1日 京都本線で女性専用車両を2ヶ月間限定で試験導入。
阪急6300系電車の特急・通勤特急・快速特急のみに設定。
同年12月2日から本格導入。
2003年(平成15年)6月10日 携帯電話の電源オフを終日ルールづけた車両「携帯電話 電源オフ車両」を全列車で試験的に導入(詳細は特記事項参照)。
7月11日から本格導入。
2004年(平成16年)8月1日 非接触型ICカードPiTaPaによる乗車サービスを開始。
STACIAカード発行。
2005年(平成17年)4月1日 阪急電鉄・阪急ホテルマネジメント・阪急交通社の各社を直轄する持株会社阪急ホールディングスに移行。
同日付けで鉄道・不動産等の事業は会社分割によって阪急電鉄分割準備(株)(休眠子会社の株式会社アクトシステムズ=1989年12月7日設立を2004年3月29日付で社名変更)に承継させた上で同社を阪急電鉄に改称、旧阪急電鉄を阪急ホールディングスに改称。
2006年(平成18年)1月21日 西日本旅客鉄道のICOCAで鉄道路線が利用可能になる。
2006年(平成18年)7月1日 PiTaPa対応カードを用いた「IC定期券サービス(PiTaPa交通料金割引)」を開始。
2006年(平成18年)10月1日 親会社の阪急ホールディングスが阪神電気鉄道との経営統合に伴い阪急阪神ホールディングスに社名変更(詳細は阪急・阪神経営統合を参照)。
2007年(平成19年)10月1日 HANA PLUSカードに代わり、STACIAカード発行開始。
2007年(平成19年)10月19日 創立100周年を迎える。
2007年(平成19年)10月29日 全路線の全車両に優先席を再設置。
合わせて携帯電話電源オフ車両の場所を一部変更。
路線
大きく神戸線・宝塚線・京都線の3つに分けられ、それぞれに本線とそれに付随する支線を有する。
また、神戸線と宝塚線は、車両をほとんど共有している(詳細は車両)ことから、まとめて「神宝線」と呼称されることがある(かつて軌道法に基づく路線であったことから「軌道線」とも呼称されたことがあった)。
日本の鉄道ラインカラー一覧は右の路線図のほか、ホームの発車番線、普通電車の行先表示板(各支線のみ)などに使われている。
一般的に本線系路線は「本」を略してそれぞれ神戸線・宝塚線・京都線と呼ぶことが多い。
■神戸線 (ラインカラー:港町神戸の海からブルー)
阪急神戸本線 梅田駅 - 三宮駅
神戸高速鉄道東西線 三宮 - 西代駅 (阪急が鉄道事業者第二種鉄道事業として列車を運行、神戸高速鉄道が鉄道事業者第三種鉄道事業として線路など施設を保有。
但し列車の運転は三宮 - 新開地駅のみ)
阪急伊丹線 塚口駅 (阪急) - 伊丹駅 (阪急)
阪急今津線 宝塚駅 - 今津駅 (兵庫県) (宝塚 - 西宮北口は今津北線、西宮北口 - 今津は今津南線と呼ばれる)
阪急甲陽線 夙川駅 - 甲陽園駅
■宝塚線 (ラインカラー:箕面の紅葉からオレンジ)
阪急宝塚本線 梅田 - 宝塚駅
阪急箕面線 石橋駅 (大阪府) - 箕面駅
■京都線 (ラインカラー:古都京都の木々からグリーン)
阪急京都本線 十三駅 - 河原町駅 (京都府)
阪急千里線 天神橋筋六丁目駅 - 北千里駅
阪急嵐山線 桂駅 - 嵐山駅 (阪急)
廃線
阪急北野線 梅田 - 北野駅 (大阪府) (1949年1月1日休止)
阪急上筒井線 王子公園駅 - 上筒井駅 (1940年5月20日廃止)
他社譲渡路線
京阪本線 天満橋駅 - 三条駅 (京都府) ほか
京阪大津線 三条 - 浜大津駅 及び 石山寺駅 - 坂本駅 (滋賀県)
※いずれも、1949年に京阪神急行電鉄から分離発足した京阪電気鉄道へ譲渡された。
詳しくは京阪電気鉄道路線の項を参照。
計画線・未成線
阪急新大阪連絡線
淡路駅 - 新大阪駅 - 十三
新大阪 - 神崎川駅
※いずれも1961年事業免許取得。
ただし、新大阪 - 十三を除く区間(淡路 - 新大阪 と 新大阪 - 神崎川)は、2003年3月1日付けで事業免許廃止となった(新大阪駅構想を参照)。
阪急の路線にはトンネルがほとんど存在しない。
工期と費用がかさみ、明治~大正時代の土木技術では危険が大きかったため、意図的にトンネル工事を避けたためである。
宝塚線はトンネルを必要とするルートを避けた結果、カーブの多い路線となった。
現在でもトンネルは第二種鉄道事業区間(神戸高速鉄道)を除くと全線で3か所しか存在せず、そのうち2か所は西院~河原町間と天六付近の地下線へ通じる入口で、出入口がある純粋なトンネルは千里線の千里トンネルただ一つである。
なお、直通運転を行っている能勢電鉄には数多くのトンネルがある。
阪神電気鉄道阪神西大阪線が近鉄難波駅まで開業する2009年以降は(開業後は阪神なんば線に改称)、関西では唯一大阪市中央区 (大阪市) に路線がない大手私鉄となる(但し京都線の車両自体は堺筋線を介して中央区に乗り入れているものもある)。
列車種別
詳しくは、各種別および各路線の記事を参照のこと。
阪急電鉄において設定される列車種別は次の通りである。
特別急行列車・列車種別通勤種別・快速急行
神戸線・京都線
日生エクスプレス
宝塚線
急行列車・列車種別通勤種別
神戸線・宝塚線
準急列車
神戸線・今津線・宝塚線・京都線・千里線
列車種別通勤種別
宝塚線・箕面線
列車種別の表示
列車種別は先頭車両前面の通過標識灯や方向幕で識別できる。
通過標識灯の点灯パターンは以下の通りである。
正面から見て両側が点灯 - 快速急行・通勤特急・特急日生エクスプレス・特急(団体・回送・試運転列車も含む)
正面から見て右側が点灯 - 通勤準急・準急・通勤急行・急行
無点灯 - 普通
急行の点灯パターンは近畿日本鉄道と同じである。
他社線との直通運転
大阪市交通局:京都線・千里線と大阪市営地下鉄堺筋線が相互乗り入れ。
大阪市営地下鉄の車両の乗り入れは基本として高槻市、北千里までだが、試運転やイベントなどで桂まで乗り入れた実績がある。
神戸高速鉄道:神戸線が神戸高速鉄道東西線に乗り入れ(新開地駅まで)
山陽電気鉄道:1998年まで神戸線が乗り入れ(神戸高速鉄道東西線を経由して山陽電鉄本線須磨浦公園駅まで、山陽車両も神戸線六甲駅まで乗り入れ)。
山陽車両は現在でも三宮駅まで乗り入れており、折り返しの回送の際、梅田側に数百メートルながら走行しており、現在でも阪急線内を走る山陽車両は存在する(客扱いはしていない)。
能勢電鉄:宝塚線が乗り入れ(阪急グループの一員。
現在では塗色も阪急と同じくマルーン一色になっている)。
能勢電鉄の車両(元は阪急の車両)は車両検査やイベントの際に乗り入れ。
平井車庫や正雀車庫まで入線している。
車両
箕面有馬電気軌道(箕有)、および、その後身の阪神急行電鉄(阪急)によって敷設された神戸線・宝塚線(神宝線)と、北大阪電気鉄道、および、その後身の新京阪鉄道によって敷設された京都線とでは、その成り立ちが異なるため、車両規格に違いがある。
車両の電装品も、神宝線は東芝製、京都線は新京阪時代の名残で東洋電機製造製と分けられている。
今でもこの慣習を守り続けている(ほかに、阪急において東芝製品は神宝線の電装品のほかに全駅の駅務機器や電車のエア・コンディショナー、エレベーター、業務用パーソナルコンピュータなど幅広い分野で使用されている)。
マスター・コントローラーは、関西では珍しくワンハンドルマスコンを積極的に採用している。
戦後1948年の阪急550形電車以後、すべての阪急車両は系列のナニワ工機(後のアルナ車両)が建造していた(阪急では車両を新規製造することを「建造」と表現する)。
しかし阪急と東武鉄道、東京都交通局、大阪市交通局などの主な納入先が経営状況の厳しさから車両新造を抑制、受注が激減したため、2002年に同社は解散。
その後の阪急車の建造メーカーに選ばれたのはそれまで関西の大手私鉄と取引がなかった(ただし、公営である京都市営地下鉄・大阪市営地下鉄とは取引があった) 日立製作所 であった。
なお、阪急の経営事情は依然として厳しいことから、新車投入と平行して、1960年代後半~1980年代前半に製造された車両をアルナ車両やグローバルテックにて更新工事を施工し、延命使用する措置を取っている(うち1970年代前半までの車両に関しては再度の更新工事施工となる)。
外装のカラーリングには、伝統的に小豆色色(阪急マルーン。
お召し列車でも用いられる色)が採用されている(ラッピング車両に抜擢された場合を除く)ほか、内装についても木目調の化粧板や色名一覧 (こ)色のアンゴラ (ヤギ)の毛のシートを採用するなど統一されている。
最近の車両(更新車含む)では経年劣化も考慮して妻面やドア部の化粧板にかなり濃い色の物を使うようになった。
なお、外部塗色については8000系導入時と9300系導入時に新色採用(メタリックオレンジやマルーンの帯化などが検討された)の案が持ち上がった事があるが、利用者や社内からも抗議や反対意見が続出したため、6000、7000系列の屋根肩部分をアイボリー色に改める以外は廃案となった(ただし現在でも、利用者や部内の中からはアイボリー帯を車体裾部分にも設ける程度であれば良いとの意見も少数ながら存在している)。
なお、京都線に乗り入れる大阪市営地下鉄堺筋線の車両に関しては、ステンレス鋼車体に茶系の帯を巻いた66系が走っている。
以前はアルミニウム合金製車体に茶帯を巻いた60系も走っていた。
ともに、2000年以降阪急線内で営業運行する車両では唯一マルーン中心の塗装でない車両である(山陽電鉄車両は1998年以降三宮以東で営業していない)。
阪急電鉄における形式の符番は次の通りである。
阪急電鉄の形式番号は1980年代に廃車された810系を最後に、以後は全車4桁になっている。
付随車(T車)には、同系の動力車(M車)の車番に、50を加えた番号を付ける。
中間車には、先頭車の車番に500を加えた番号を付ける。
動力車、制御車、付随車といった形式記号は付けない。
1.はすでに3桁時代の700系(神宝線の700系は後に800系となる)新造車から始まり、2.は3000・3300系から始められた。
C7512(この場合、7012Fに属し、梅田よりの2号車)を例に取ると以下のようになる。
7 (千の位)...車両形式の系列を示す。
1から始まり、形態や性能ごとに現在9までの数字で分けられている(4は事業用車)。
5 (百の位)...0~4先頭車、5~9中間車、0~2・5~7神宝線、3・4・8・9京都線。
1100系~3100系までは0・5が神戸線用、1・6が宝塚線用だった。
2・7は普段は使用せず、試作車や特別車両用に空けられる。
1 (十の位)...0~4電動車、5~9付随車
2 (一の位)...製造順位番号。
製造順に他社のような1ではなく0から付けられる(山陽電気鉄道も同じ)。
但し、3300系までは京都線用は1から始まるようにされていた(新京阪時代の名残)。
ただし、もともと先頭車だった車両で、その後の改造で運転台を撤去(中間車化)した場合でも、改番されることなく、製造当時の番号のままで使用されている(例:3000系のC3000)場合があるので、注意が必要である。
乗り入れ車両
大阪市交通局
大阪市交通局66系電車
過去の乗り入れ車両
山陽電気鉄道 - 現在は阪神電気鉄道と神戸高速鉄道のみに乗り入れている。
また普通・S特急(土曜・休日ダイヤのみ)運用のみで阪急三宮駅に姿を現している。
山陽電気鉄道5000系電車
山陽電気鉄道3000系電車
大阪市交通局
大阪市交通局60系電車(66系の増備に伴い全廃された)
系列会社の車両の特徴
阪急の系列会社である北大阪急行電鉄(北急)や神戸電鉄(神鉄)、北神急行電鉄(北神)などでは、一部車両の車内装飾が阪急車両に準じたものとなっている(北急では北大阪急行電鉄8000形電車、神鉄では神戸電鉄5000系電車、北神では北神急行電鉄7000系電車。
内装画像はそれぞれMediaKitakyu 8000 inside、MediaShintetsu5000を参照)。
乗務員区所
梅田乗務区(京都本線、宝塚本線、神戸本線)
西宮北口乗務区(神戸本線)
桂乗務区(京都本線)
淡路乗務区(千里線、京都本線)
運賃
大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。
2004年12月1日現在。
回数券の取り扱い
2007年4月1日より、180円区間、260円区間、310円区間の全ての回数乗車券については、有効期間内であれば阪神電気鉄道でも利用可能となった。
但しそのままでは利用できず、阪神線で利用する際は入場前に青色の券売機で阪神の乗車券に引き換える必要がある。
乗車カード・企画乗車券
以下の各項目を参照。
STACIAカード
ラガールカード
阪急阪神1dayパス
OSAKA海遊きっぷ
大阪周遊パス
高野山1dayチケット
奈良・斑鳩1dayチケット
プロ野球球団
阪急ホールディングス(現・阪急阪神ホールディングス)として持株会社となる前の旧・阪急電鉄は1936年から1988年までプロ野球球団、阪急ブレーブス(後にオリックス・ブルーウェーブ、現在はオリックス・バファローズ)を、西宮球場(後の阪急西宮スタジアム、2002年に閉鎖)をプロ野球地域保護権として所有していた。
阪急電車という呼称
関西では私鉄に対し「○○電車」という呼称が定着しているが、「阪急電車」のみ今ではあまり看板などでは見かけなくなっている。
これは1992年の創業85周年を機に、会社側が公式な通称を「阪急電鉄」と変更したため。
ただし乗客は今でもほとんどが「阪急電車」あるいは「阪急」と呼ぶ。
ホームの呼称
一般的にホームの呼び方は「○番線」だが、阪急電鉄では「○号線」という呼び方である。
これは「○番線」が社内での構内配線に対しての呼び方であるため。
ただし、三宮駅駅構造では例外的に「○番ホーム」という呼び方をしている。
ホームが2本しかない駅では島式・対向式に関係なく原則として自動放送でホーム番号を言わず、「皆様、まもなく大阪梅田方面に向かう電車が到着します」のように、行き先の方面で表現する。
例外的にホームが3本以上ある駅でも番号を言わない場合もある(京都線の駅や、優等列車通過駅が多い。
例:園田駅、茨木市駅、高槻市駅、桂駅)。
また、仁川駅では阪神競馬場開催時の臨時列車の関係で回送車の発着があるため行き先すら付かない。
かつては正雀駅も配線の関係上1つのホームから両方向の列車が出るため行き先が付かなかったが、列車案内装置・放送機器の更新により2008年2月から優等列車停車駅並みの詳細放送に変更された。
淡路駅には1号線が無く、2~5号線のみとなっている。
かつては1号線が存在したためで、社内業務にも乗客にも混乱となることを防ぐために、1号線廃止の際に番号を順送りしなかった経緯がある。
桂駅には1号線の隣に「C号線」がある。
もともとは、隣接する桂車庫のC号線であったものを、ホームを設置して駅としたものである。
番号を順送りしなかった点で、1号線のない淡路駅と同じ理由である。
駅・車内での案内
天神橋筋六丁目駅に停車する列車は、「次は天神橋筋六丁目、天六です」といったアナウンスをする。
略称を最初に言う車掌が多い中、珍しい例である。
梅田、三宮、宝塚といった西日本旅客鉄道の路線に乗り換え可能な駅に着く際の乗り換え案内では旧日本国有鉄道時代から一貫してJR線への案内をしていない。
ただし2006~2007年のダイヤ改正で路線図に関してのみ表記するようになっている。
ちなみに大阪市交通局は堺筋線扇町駅をJR大阪環状線への乗り換え駅として案内しているが、阪急電車の路線図にはその旨が記載されていない。
駅構内の自動放送はタレントの片山光男と丸子由美が担当している。
ちなみに片山は並行する福知山線の駅放送も務めている。
1996年1月1日、「ジェントルサウンドサービス」の一環として、駅・車内での案内を変更した。
具体的には自社線内での車掌の手笛による発車合図を原則廃止。
優等列車の停車駅の案内を「次は○○まで止まりません」から「次は○○に止まります」に。
次駅の案内を「次は○○でございます」から「次の停車駅は○○でございます」に、また案内回数を主要駅を除き原則1回とした。
2005年10月1日から車内での案内放送を「次の停車駅は○○でございます」から「次は○○、○○です」に変更している。
2006年10月1日からは神戸線・宝塚線で2007年3月16日からは京都線の駅ホームでの案内放送を「ただいま到着の電車は各駅停車梅田行きでございます」から「ただいま到着の電車は各駅停車大阪梅田行きです」に変更している。
梅田・三宮・新開地・河原町の4駅については「大阪梅田」「神戸三宮」「神戸新開地」「京都河原町」のようにアナウンスする(繰り返す場合は2回目以降、大阪・神戸・京都の部分を省略する)。
ただし「神戸新開地」の呼称は大阪府内(梅田駅や十三駅など)のみ実施し、兵庫県内では単に「新開地」とアナウンスされる。
また、神戸高速線内の上り列車では「阪急三宮」「阪急・大阪梅田」とアナウンスされる。
梅田駅での乗車
乗客は着席にこだわる者が多く、梅田駅では発車間際の特急や急行のドアの前に着席目当てで次の電車を待つ乗客の列がいつもできている。
川西能勢口駅や宝塚駅のように他線との乗換駅では次の電車の着席目当てで乗客が猛然とダッシュする風景も見られる。
なお、十三~梅田間の折り返し乗車は通常では不正乗車(この区間は運賃計算に含まないため)であるが、なにわ淀川花火大会(旧・平成淀川花火大会)の際には十三駅が大変混雑するため、梅田までの折り返し乗車を特例で認めている。
携帯電話電源オフ車両
阪急電鉄では、携帯電話の電源オフを終日ルールづけた車両「優先席携帯電話電源オフ車両」を全列車に設定している。
2003年6月10日から1か月間限定で試験導入、同年7月11日から本格的に導入した。
また京都線に直通する大阪市営地下鉄堺筋線や同じ阪急グループの能勢電鉄・神戸電鉄でも導入されている。
またこの「携帯電話電源オフ車両」についてのアナウンスは、車掌によって少し違うことがある。
設定車両:1車両(神戸・宝塚・京都・嵐山・伊丹・箕面・川西能勢口側の先頭車両)
復活した「優先座席」
もう一つ、阪急電鉄の独自ルールとして特筆されたものが「全席優先座席」である。
阪急電鉄では「特定の席にこだわらず、すべての座席で譲り合いの精神を」とのことから、決まった優先座席を廃止して1999年4月から「全席優先座席」を導入していた。
阪急電鉄で「携帯電話電源オフ車両」が設定されたのは、同業他社が「優先座席付近では携帯電話の電源をオフ」というルールをこぞって導入したが、阪急には特定の優先座席がなかったためこうなった。
ところが、阪急電鉄側の思惑とは裏腹にこの「全席優先座席」は浸透せず、ほとんど座席の譲り合いが行われていないという現状を受け、2007年6月末の阪急阪神ホールディングスの株主総会で再設置の要望があったのを機に全席優先座席を見直すことになり、同年10月29日に「全席優先座席」は廃止され、再び「優先座席」を設置した。
しかし、優先座席の設置箇所は基本的に各車両の「梅田を前方としたときの最後尾座席」であるのだが、運転台、もしくは運転台跡が存在する車両はそれらの逆側の座席となっており、中間に運転台およびその廃止改造を行った車両が含まれる編成(神戸線の8032Fなど)だと、優先座席が車両によって前の方にあったり後ろの方にあったりとあまり統一されていないという懸念がある。
乗務員と運転業務
駅構内で優等列車の通過待ちをする列車の乗務員は必ずホームに立ち通過監視を行う。
そのとき運転士はブレーキハンドルを非常ブレーキ位置にセットし、さらにマスコンキー(京都線車両の5300系以前についてはリバースハンドル:主幹制御器に取り付ける前進・後進の切り替えハンドル)を所持してホームに立つ。
乗務員交替駅発車時、警笛吹鳴を行うことがある。
テレビ・映画撮影
1990年代後半頃に近畿地方の鉄道事業者では初めて外部の事業者のテレビ番組、映画、ドラマの撮影を認めた(日本の鉄道事業者で最初にこの事業を開始したのは京成電鉄である)。
その他
登記上の本店所在地を大阪府池田市に置いていることから、池田市を所管する豊能税務署の法人税ランクでは常にトップである。
日本の鉄道事業者で初めて「学生専用出口」を1960年代中頃に甲陽線甲陽園駅を皮切りに一部の駅で開設した(制服着用が条件)。
毎年年末年始は土曜・休日ダイヤ編成だが、宝塚線に限り正月三が日は「臨時ダイヤ」として急行と普通列車をそれぞれ10分ずつの間隔で運転する。
京都線でも昼間の特急が増発されるまでは正月三が日に限って、特急・急行を増発していた時期もある。
朝夕のラッシュ時などの押し屋(アルバイト)として学生班が設けられている。
その名の通り、大学生と専門学校生が雇用対象である。
関西私鉄で初めて駅構内に立ち食いそば・うどん店を設けたのは阪急電鉄である(阪急そば)。
国際文化公園都市(愛称:彩都)に土地を保有している。
鉄道模型
グリーンマックスより阪急通勤車の未塗装エコノミーキットが発売されている。
パーツの組合せで2000系~8000系までの車両が製作可能。
その他の形式については各形式の項目を参照。
関係企業
阪急阪神東宝グループに属する全企業の一覧は阪急阪神東宝グループを参照。
阪急百貨店
東宝
阪神電気鉄道
阪急電鉄グループ
能勢電鉄
北大阪急行電鉄
神戸電鉄
北神急行電鉄
神戸高速鉄道
阪急バス
阪急田園バス
神鉄バス
丹後海陸交通
阪急タクシー
阪急交通社
関西テレビ放送 - フジニュースネットワーク/フジネットワークの準キー局。
フジサンケイグループにも近い
阪急コミュニケーションズ(元TBSブリタニカ)
アルナ車両
ステーションファイナンス
シアター・ドラマシティ
アーバン・エース
森組
コマ・スタジアム - 東宝グループでもある
東京楽天地 - 東宝グループでもある
オーエス - 東宝グループでもある
下津井電鉄 - 阪急電鉄が資本参加しているが、関係は比較的希薄である。
全但バス - かつて阪急電鉄の関連企業であった。
池田銀行 - 阪急阪神ホールディングスが大株主で、阪急電鉄の駅構内に設置している現金自動預け払い機 (PatSat) の管理銀行。
毎日放送 - 関西テレビの開局に携わっているイメージが強いが、毎日放送の前身である新日本放送の開局にも携わっている。
エフエム大阪 - 阪急阪神ホールディングスが株主になっている。
現在SDD(ストップ・ドランク・ドライビング)プロジェクト(飲酒運転をやめる運動)のスポンサーとして阪急阪神東宝ホールディングスとして提供。
Kiss-FM KOBE - 時期は不明だが、過去に提供番組があった。
提供番組
阪急ドラマシリーズ - 関西テレビで放送されていた番組で、近畿地区では阪急百貨店・阪急不動産とともにスポンサーとなっていた。
MBSナウ - かつて提供していたテレビ番組。
MBSタイガースナイター - 「ブレーブス・ダイナミック・アワー」では阪急百貨店とともに提供したラジオ番組。