法華寺 (Hokke-ji Temple)
法華寺(ほっけじ)は、奈良県奈良市法華寺町にある光明宗の寺院。
奈良時代には日本の総国分尼寺とされた。
山号はなし。
本尊は十一面観音、開基は光明皇后である。
起源と歴史
光明皇后ゆかりの寺として、また門跡尼寺(皇族などが住職となる格式高い寺院)として知られる。
東大寺が全国の総国分寺であったのに対し、法華寺は総国分尼寺であり、詳しくは法華滅罪之寺(ほっけめつざいのてら)といった。
法華寺の地にはもと藤原不比等の邸宅があり、不比等の没後、娘の光明子、すなわち光明皇后がこれを相続して皇后宮とした。
天平17年(745年)皇后宮を宮寺としたのが法華寺の始まりである。
大和国の国分尼寺、日本の総国分尼寺と位置付けられるのは、2年後の天平19年(747年)頃からである。
法華寺造営のための役所であった造法華寺司は延暦元年(782年)に廃止されており、この頃には伽藍整備が完成していたと見られる。
奈良時代の法華寺は東西両塔をもつ大寺院であったが、平安京遷都以後は次第に衰微し、平安時代末期にはかなり荒廃していたことが当時の記録から伺える。
治承4年(1180年)の平重衡の兵火では東大寺、興福寺が炎上し、法華寺も被害を受けたという。
鎌倉時代に入り、東大寺大仏の再興を果たした僧・俊乗坊重源(しゅんじょうぼうちょうげん)は、建仁3年(1203年)、法華寺の堂宇や仏像を再興した。
現在も寺に残る鎌倉時代様式の木造仏頭は、この再興時の本尊廬舎那仏(るしゃなぶつ)の頭部であると推定されている。
さらに、鎌倉時代中期の真言律宗の僧・叡尊(えいそん)によって本格的な復興がなされた。
その後、明応8年(1499年)と永正3年(1506年)の兵火や慶長元年(1596年)の地震で東塔以外の建物を失った。
現在の本堂、鐘楼、南門は慶長6年(1601年)頃、豊臣秀頼と母の淀殿が片桐且元を奉行として復興したものである。
なお、兵火や地震の被害をまぬがれていた東塔は宝永4年(1707年)の地震で倒壊した。
法華寺は叡尊の時代以来、真言律宗における門跡寺院としての寺格を保っていたが、平成11年(1999年)、創建当時のように独立した寺に戻ることとなり、光明皇后にちなんで「光明宗」と名づけ離脱・独立した。
伽藍
本堂(重要文化財)-慶長6年(1601年)、豊臣秀頼と淀殿の寄進で再建された。
寄棟造、本瓦葺き。
再建にあたっては、地震で倒れた前身堂の部材が再利用されている。
堂内厨子に本尊十一面観音像を安置する。
鐘楼(重要文化財)-鬼瓦に慶長6年(1601年)の刻銘があり、鐘楼の形式や細部からみて桃山時代の再興と考えられる。
南門(重要文化財)-切妻造・本瓦葺の四脚門で、本堂と同時に再建された。
赤門
客殿-本堂裏手にある書院造建築。
庭園は国の名勝に指定されている。
から風呂(重要有形民俗文化財)-光明皇后が千人の垢を自ら流したという伝説のある蒸し風呂であるが、現存の建物は江戸時代中期以降のものである。
横笛堂-かつて南門を出て左側の飛地境内にあったが、赤門の東側に移築されている。
『平家物語』や高山樗牛の「滝口入道」で知られる悲恋物語のヒロイン・横笛が尼となった後に住んだとされる建物。
横笛が手紙の反故(ほご)で自らの姿を作ったという伝承のある張り子の横笛像(高さ約30センチ)が安置されていたが、本堂に移されている。
文化財
境内が国の史跡に指定されている。
国宝
木造十一面観音立像-法華寺の本尊。
像高約1メートルの比較的小さな像である。
「天竺(インド)の仏師・問答師が光明皇后の姿を模してつくった」という伝承をもつが、実際の制作は平安時代前期と見られる。
制作当初から彩色や金箔を施していない素木像だった。
髪、瞳、眉などに黒、唇に朱を塗り、髪や装身具の一部に金属を用いるほかは、木肌の美しさを生かした素地仕上げとする。
両手首から先など、ごく一部を別材とするほか、頭・体の主要部を一材から彫り出した一木造である。
本像の風貌や全体のプロポーションにはどこか女性的・異国的なものを感じさせることから、前述のような伝承を生んだものであろう。
保存状態もよく、平安時代彫刻を代表する作品の1つである。
当初からの本尊ではなく、近世初頭に本堂が再興された際に本尊とされたものと考えられている。
絹本着色阿弥陀三尊及び童子像-平安時代末~鎌倉時代初期の仏画。
奈良国立博物館に寄託。
名勝(国指定)
法華寺庭園 - 江戸時代前期の作庭。
前庭、内庭、主庭で構成される。
重要文化財(国指定)
本堂
鐘楼
南門
乾漆維摩居士(ゆいまこじ)坐像-奈良時代
木造二天頭(伝・梵天帝釈天の頭部)-奈良時代
木造仏頭-鎌倉時代
叡尊自筆書状
法華寺縁起類3巻1冊
重要有形民俗文化財(国指定)
から風呂
直近の行事(6月)
§ から浴室(からふろ)施浴法要
法華寺浴室は光明皇后様御発願以来一貫して一般庶民のために施浴施設として活用され続け、薬草を用いて蒸し風呂を炊くという、極めて珍しい形式の浴室です。
また、近年に古式に則り竃を炊いて、沐浴修行する施浴法要を復活しました。
施浴法要実施日 6月13日 (体験は信徒会員対象、入会は法華寺宛て問合せ下さい。)
§ 象鼻盃「蓮の花を愛でる会」
法華寺蓮を愛で、象鼻盃をいただき、お寺で癒しのひと時を過ごしていただけます。
実施日 6月27日 午前10時より
本尊特別御開扉
春季 3月20日 ~ 4月7日
6月 5日 ~ 6月 9日
秋季 10月25日 ~ 11月10日
名勝庭園公開
春季 4月 1日 ~ 6月 9日
秋季 10月25日 ~ 11月10日
慈光殿公開
春季 3月20日 ~ 4月30日
秋季 10月25日 ~ 11月10日
年中行事
修正祭 1月 1日より3日間
節分会(星まつり) 1月28日 ~ 2月 3日
古代ひな人形展 3月 1日 ~ 3月18日
初午祭 3月初午の日
涅槃会 3月15日
彼岸会 春秋皇霊祭を中心に7日間
雛会式(ひな会式) 4月1日より7日間
開祖光明皇后御忌 6月7日
からふろ(浴室) 6月13日 (5千円/人)
象鼻杯 6月27日
蓮華会 7月17日
地蔵会 7月23日
盂蘭盆会 8月13日 ~ 8月15日
天王宮祭 10月17日
お火焚き祭 12月8日
※日程につきましては変更される時がありますので、お尋ねください。
月例行事
光明写経 毎月第4木曜日 9時半~15時半(1巻 3千円)
護摩祈願 毎月28日 10時~
2010年 特別行事
光明皇后様1250年大遠忌法要
2010年(平成22年) 5月6日~8日
アクセス
JR関西本線奈良駅・近鉄奈良駅より奈良交通バス(西大寺駅・航空自衛隊行き)「法華寺」下車すぐ
近畿日本鉄道大和西大寺駅より奈良交通バス(JR奈良駅・白土町行き)「法華寺」下車すぐ