按察使 (Azechi)
按察使（あぜち）
奈良時代に設置された、地方行政を監督する令外官の官職。
詳細は按察使 (律令制)を参照。
明治維新後、明治政府によっておかれた地方政治を監督する官名。
詳細は按察使 (明治政府)を参照。
按察使 (律令制)
按察使（あぜち）は、地方行政を監督する令外官の官職。
数カ国の国守の内から1人を選任し、その管内における国司の行政の監察を行った。
奈良時代の719年（養老3年）に設置された。
平安時代以降は陸奥国・出羽国の按察使だけを残し、納言（大納言・中納言・少納言）・参議などとの兼任となり実体がなくなった。
初めて任命された按察使
『続日本紀』によると、奈良時代初頭の719年（養老3年）7月13日に以下の11名の国司が初めて按察使に任命された。
門部王（伊勢国守、従五位上）は伊賀国、志摩国の2国を管する。
大伴山守（遠江国守、正五位上）は駿河国、伊豆国、甲斐国の3国を管する。
藤原宇合（常陸国守、正五位上）は安房国、上総国、下総国の3国を管する。
笠麻呂（美濃国守、従四位上）は尾張国、三河国、信濃国の3国を管する。
多治比縣守（武蔵国守、正四位下）は相模国、上野国、下野国の3国を管する。
多治比廣成（越前国守、正五位下）は能登国、越中国、越後国の3国を管する。
小野馬養（丹波国守、正五位下）は丹後国、但馬国、因幡国の3国を管する。
息長臣足（出雲国守、従五位下）は伯耆国、石見国の2国を管する。
鴨吉備麻呂（播磨国守、従四位下）は備前国、美作国、備中国、淡路国の4国を管する。
高安王（伊予国守、従五位上）は阿波国、讃岐国、土佐国の3国を管する。
大伴宿奈麻呂（備後国守、正五位下）は安芸国、周防国の2国を管する。
管轄地域を巡回し治安維持することが按察使の主務であったため賊等の矛先が向けられることもあり、720年（養老4年）夏には陸奥国按察使の上毛野廣人が殺害される事件が発生した。
朝廷はただちに武蔵国按察使の多治比縣守を持節征夷将軍に任じて下毛野石代を副将軍に、また阿倍駿河を持節鎭狄将軍に据えてこれを鎮圧した。
按察使 (明治時代)
明治政府における按察使（あぜち）は、地方政治を監督する官である。
1869年（明治2年）政府の官制を律令制にならって改定した際に設置された。
官職には長官・次官・正判官・権判官を置いた。
三陸（陸前国・陸中国・陸奥国）、両羽（羽前国・羽後国）、磐城国按察使府、越後按察使府が置かれただけで実際に活動することはなく、翌1870年（明治3年）10月に廃止された。